<勝手に解説、R2改定> 190724令和2年度診療報酬改定に向けた議論(1ラウンド)の概要

R2改定へ向けて中医協資料等を勝手に解説します。
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〇2020年度診療報酬改定に係る議論が中医協総会にて4月から始まった。2025年を一つの着地点かつ通過点とした場合、向こう2回の改定(2020年度、2022年度)は業界にパラダイムシフトをもたらす制度改定となるだろう。そして、2024年度は介護報酬との同時改定となり、2025年を目前とした総仕上げと2040年へ向けて本格的なダウンサイジングが始まることになる。過去にあったいずれの改定も重要であることに違いはないが、今後の改定は「店をたたむかどうか」の経営判断を左右するものになる可能性が高く、細心の注意を払って内容を分析しなければならない。4月からの中医協総会は、秋以降にある本格的議論のための勉強という印象であった。これまでの主な議論とその論点の概要が整理されており、現状認識のためにはとても良い資料になっている。私自身の復習と思考整理のために、コメントしてくことにする。(2019/08/15)
「3各テーマにおける論点・課題と主な意見」を読んで率直に感じたのは、改定の矛先を生活習慣病から外そうとする勢力があるのではないか?ということだ。発達障害児・者、慢性疾患を抱える小児、女性特有の疾患も大変重要なテーマであるが、生活習慣病の診療及び処方の適正化と効率化なしに、その他の領域へ割く財源は捻出されない。同時並行で改革が必要と考える。今後、中医協総会にて議論が深まる中で、生活習慣病診療、処方における効率化施策がいかにして取り込まれるか、注視していく必要がありそうだ。(2019/08/16)


「患者・国民から見た医療等について」では、かかりつけが論点となったようだ。しかしながら、この制度はその必要性は理解できるものの、その実行性については疑問がどうしても拭えない。利便性という観点でかかりつけを考えた場合、極端に損なわれてしまうと感じるのは私だけだろうか。オンラインとセットで進めて欲しい制度だが、多くの医療機関では体制が整っていない。自由が効かない職業に従事する人間にとっては、オンライン診療が可能かどうかは「かかりつけ」を選定する要因として最上位にくるに違いない。薬局も然りである。そもそも文中にある「患者・国民が求める役割等をふまえたかかりつけ医機能の在り方」とは一体どんなものだろう。(2019/08/17)

〇次回改定で「定額負担の対象病院」が再度拡大することは濃厚のようだ。400床以上の大病院では紹介状なし患者に対する選定療養の徴収が前回改定にて義務付けられたところである。働き方改革や医療費抑制へのために、病院が外来抑制と入院医療に傾注するには必須の方策となる。大病院における外来抑制は周辺の医療機関や薬局へどのように影響しているのだろう。非常に気になるところではあるが、高齢化等による純粋な患者増や大病院の処方機関の拡大によって、その影響を分析することは困難となっている。しかし、制度改定や患者心理の微妙な変化による影響は、確実に何らかの作用をもたらしている。(2019/08/18)

ところで、紹介状を持たず初診として大病院を受診した患者のその後はどういった扱いになるのだろう。実務に携わっていないため真偽は定かでないが、おそらく次回以降は通常の再診患者と同様の取扱いとなるのではなかろうか。仮にそうだとするならば、選定療養による定額負担を、クリニックの初診に費やす時間と料金、紹介状(診療情報提供書)発行に要する費用であると割り切ってしまえば、5000円程度の支払いであれば全く高額なものではないと捉えることもできる。と言いつつも、国民皆保険医療が定着している日本において、保険外の請求にはやはり抵抗があるだろうから、それなりの初診抑制には効いていると思われる。しかし、病院の機能分化を阻害している本当の要因は初診患者ではなく、クリニック等でも十分対応可能な再診患者であり、いかにして逆紹介を増やし外来患者数を減らしていくかが、今後の機能分化に係る施策で議論されるべき争点になると考えている。(2019/08/20)



〇「かかりつけ制度」が定着していないことが議論されたようだ。地域包括ケアシステムの医療提供体制における入り口(ゲートオープナー)として「かかりつけ制度」を前提とするならば、現時点でその制度はほとんど国民に浸透しておらず、ひとつのゴールとなる2025年には到底間に合いそうにないというのが現状だ。このまま2025年へ向けて突き進むか、それとも立ち止まってその必要性を再考するか。そんな議論があってもよいのではないだろうか。(2019/08/21)

〇そもそも診療報酬によって、かかりつけ体制の整備、患者を誘導することは可能なのだろうか。幾何かの規制はあるものの、フリーアクセスを原則とする本邦の医療提供体制において、患者の受療行動を制限することには相当の障壁がある。患者自身の受療行動を改革できない限り、診療報酬によって手厚いインセンティブを付けたところで、何の解決にもならないだろう。ポリファーマシーの問題も然りだ。服薬情報の一元化は、基本的に性善説や患者の善意に依存しているところが大きい。つまり、患者は医療従事者に対していくらでも嘘をつくことができるし、お薬手帳を何冊も所持してあたかもかかりつけは一つであるかのような偽装が可能である。しかし、マイナンバーカード等を用いて、クラウド上で患者の受療行動、服薬情報を可視化できる環境が整備されれば、上記の問題は解決できると考えている。一元化と可視化が可能になれば、患者自身のヘルスデータに登録されたかかりつけ医、歯科医、薬剤師以外は利用できないような制限が可能になる(もちろん、出張先で体調が悪くなった場合など、特別な事情は配慮されるべきである)。国庫にも限りはある。診療報酬によるインセンティブよりも優先されるべき使途があるような気がする。(2019/08/22)

〇かかりつけ歯科医並びに口腔疾患の重症化予防は引続き推進されそうな雰囲気だ。医科の機能強化加算、調剤のかかりつけ指導料とは異なり、良好な評価が定着しているような気がする。医科、歯科、調剤、薬剤・材料の間で複雑な綱引きが起きそうだ・・・(2019/08/23)

〇次回改定でも、かかりつけ、病院薬剤師、対物から対人、お薬手帳活用が焦点になりそうだ。お薬手帳持参患者の負担については、前々回辺りから紆余曲折し始めた。患者のみならず医療関係者にとっても、理解し難い制度設計になっている。仮にお薬手帳を、適正な保険医療サービスを受けるうえで必須のものとした場合、それを持参しない患者は10割負担となっても文句は言えないことになる。もしくは、10割とは言わないまでも、選定療養の対象とするのはどうだろ。現場はしばらく混乱するだろうが仕様がない。次回改定でどのように決着するかが1つのポイントだ。(2019/08/24)
〇「対人から対物へ」という潮流の中で、調剤技術料を引下げによってできる財源を、かかりつけ指導料や他の薬学管理料へと配分する動きが顕著になるだろう。対物業務をいかに効率化して、重点が置かれる業務を充実させるか、付け焼刃では乗り切れない改定になりそうだ。特に「かかりつけ薬剤師」の有効性が取上げられているため、次年度改定でかかりつけに係る点数が強化される可能性が高い。(2019/08/25)

〇「かかりつけ」はやはり1箇所、1人であるべきなのだろうか。複数の医師又は薬剤師の間で患者情報が一元化できれば、全員がかかりつけ医師、かかりつけ薬剤師でも構わないような気がしている。お薬手帳の取扱い同様に、制度設計がいまいちしっくりこないかかりつけ制度は次回改定でどのように正されるのか。間違いないのは、対人業務が重視されること。兎にも角にも「患者のための薬局ビジョン」が重要となる。(2019/08/26)





〇患者への情報提供、情報公開、それに係る透明性と費用負担が取上げられている。ホームページ等の電子媒体から紙媒体に至るまで、時代に合わせた情報提供の体制整備が施設基準などで求められると考えられる。気になるのは、都道府県が医療機能情報提供制度に基づいて運営している「医療情報ネット」の認知度が低い一方で、医療機関や薬局が独自に開設するホームページのほうが有効だという一文だ。医療情報ネットに盛り込まれているような情報を、医療機関や薬局が独自のホームページで公開することになれば、その作業負担はかなりのものになるだろう。ベンダーがまた儲かる。(2019/08/27)

〇地域包括ケアシステムの制度設計に、診療報酬改定はどこまで対応できるのだろうか。医療提供体制が崩壊しないよう、入院から在宅、医療から介護の切れ目なく、手厚くはないまでも効果的な流れを下支えする制度設計が必須となる。多くの医療従事者が手を挙げるためには、やはり報酬設計が重要になる。就労継続の支援、妊産婦・乳幼児の対応、生活習慣病の重症化予防など、普通の外来対応以外に、社会が抱える課題へ対応できる力が求められる。人員が限られるクリニックや薬局では、一人一人がオールマイティであるに越したことはないが、役割分担で施設としての守備範囲を広げる取組みはどうだろう。単独で対応できない場合は、地域医療連携推進法人の設立が避けられない。(2019/08/28)




〇働き方改革にはお金が掛かる。労働者個人の負担は減る一方で、事業所にとっては人件費が増大するだけでなく、労務管理や割当業務の采配に余計な気配りが必要になり、良いことなしだ。一般の企業であれば、社会的要請に応えるためには不断の経営努力が必要になる。追加採用など容易にはできない。しかし、医科の診療報酬では医師の労働環境改善のためにインセンティブが設けられている。このインセンティブが十分か否かの議論を別にして、「追加的に生じるコスト」の妥当性について是非を問う委員がいるのは不思議ではない。次回改定では効率化を伴う充実化を期待する。(2019/09/05)

〇診療報酬における病院・薬剤師と薬局・薬剤師の評価をどうするか、の議論が次回改定では本格化しそうだ。議論の発端として、病院勤務薬剤師の人員不足、その原因と考えられる給与格差が焦点になっている。個人的には、調剤料のみを切り取って単純比較できる問題ではないと考えている。医科診療報酬は本来、専門的な外来医療と入院医療を行うに要する費用を包括的にカバーするためのもと理解している。そうだとするなら、給与格差は病院の人事労務管理の問題になるが、そういう議論は無さそうだ。タスクシフティングによって、複数の専門職が自分達の評価を主張すれば、診療報酬は複雑化する上、膨張する。(2019/09/06)

〇院外処方において、PBPMという枠組みを用いたタスクシフティング、はたまた規制緩和が進みそうだ。医科診療報酬では「〇〇連携加算」の名称で新設されるイメージができる。一方で、調剤ではどうだろう、建付けが難しいと感じる。地域支援体制加算の施設基準にねじ込む程度の想像しか私にはできない。また、大学病院における医師の過重労働とともに、看護師が注射手技を行っていないという現状が取り上げられている。大学病院で注射手技を行っているのは大抵の場合、研修医だろうと思うが、ついにその構図が変わろうとしている。(2019/09/07)





〇診療報酬改定の議論を効いていると、労働人口が少ないのか、患者が過剰なサービスを提供しすぎなのか分からなくなってくる。公的医療サービスにおいて、一人の患者に提供すべき医療サービスの量と質は今も昔も変わらないはず(技術的な進歩は除く)。しかし、より一層質の高いサービスが主張される一方で働き方改革が求められるという二律背反の議論が行われているような気がしてならない。もちろん、従来の業務自体が国家資格に値するかどうかを考えて、充足さえるべきところには修正的な制度設計を行う必要がある。一方で、妊産婦については時代に合った追加的な対策が必須だろう。現代の妊産婦を囲む医療提供体制の充実化を期待する。それにしてもやはり専門職が足りない・・・(2019/09/08)


〇話は少し脱線するが、救急医療、小児・周産期領域においては、一般生活者や患者の医療リテラシーを上げる努力なくして医療提供体制の維持は不可能と考えている。発熱しただけで救急車を読んだり、病院から他の病院への移動のために救急車をタクシー代わりに利用したり、日中は仕事が忙しいということを理由に夜間・救急の医療機関へ患者が集中するなど、医療資源の酷使が甚だしいという現状がある。このままでは、いくら診療報酬点数で手当を図ったところで、根本的な問題解決にはつながらないと考えている。国民全体のモラル、医療リテラシー向上のために、政府はもっと真剣になる必要がある。学校の就学時間を延長するなどして、社会構造を維持するために必須となる知識を得る学習時間を確保すべきではなないだろうか。(2019/09/09)




〇次回診療報酬改定では、遠隔診療に係る制度設計の拡大・緩和への期待が非常に大きいと考えている。これまでは特段の興味はなかったが、いざ自分自身が定期的に受診が必要になると、急に遠隔診療、オンライン診療の必要性を感じるようになった。私は今、爪白癬の治療中で、処方される薬剤は1種類の外用剤のみである。その処方箋を受け取るために、比較的空いている時間帯を狙って診察券を出すも、最短で20~30分の待ち時間に対して診察は極端に短い。だからといって、不必要に長い診察時間を要求するつもりはない。せめて機能強化加算の請求だけはご勘弁願いたいが、算定ルール上そうもいかないのは理解している。オンライン診療料の要件を緩和して効率的な点数設計にすれば、利用者も増加する可能性が高く、患者のみならず医療機関側にとっても喜ばしいことだと思うがいかがだろうか。(2019年9月10日)
●電子版お薬手帳が岐路に立たされている。紙のお薬手帳であれば、どの医療機関、どの薬局、誰に見せても一目瞭然。ICTが発達していなかった時代において、お薬手帳は投薬情報の記録、管理と共有のためにベストの媒体だったと思う。では、ICT技術が格段に発達した現代において、電子お薬手帳は理想的なツールなのだろうか。使い勝手を考えると、個人的には紙のお薬手帳に軍配が上がると考えている。長野県の上田薬剤師会では、患者の薬歴をクラウドで共有する取り組みを開始したらしい。なかなか素晴らしい試みだと思う。次回改定にて、薬歴の記録、管理、共有の評価はどのように変わるだろうか。その如何によっては、現行の電子版お薬手帳は本格普及しないまま姿を消すことになる。(2019/09/11)
●ポリファーマシーの問題はいったいどこに落ち着くのだろう。物理的な医薬分業がいくら進んでも、医薬品の心理的かつ実質的な主導権を手放すのには抵抗があるのかも知れない。一律に2剤減薬を評価する現行制度は現実的でない上、効果にも疑問が残る。院内における減薬について病院薬剤師が貢献しているとすれば、院外では薬局薬剤師が同様に機能できるはず。院内のほうが医師との距離が近いという点で「やりやすさ」はあるだろうが、処方変更の権限移譲するなどの工夫ができれば、院外で生じるハードルは解決できるはずだ。その際、服薬歴の共有システムやフォーミュラリーなどのハードが重要であることは間違いないが、薬剤師自身のソフト面ももちろん問われることになる。(2019/09/12)

●2020年9月末80%クリア、政府が掲げるジェネリック使用率の最終?目標値だ。協会けんぽの実績では2019年4月末で79.1%、厚労省のデータでは2019年1月末に77.5%まで増加してきている。このまま順調にいけば目標達成ということになりそうだ。しかし、来年はオリンピックイヤーだ。国内人口が集中する東京近郊では、7月中盤からオリンピック関連のインバウンドで混乱に陥る可能性がある。医療機関も然りだ。ジェネリックへ切り替える余裕はあるだろうか。次期診療報酬改定では、ジェネリック関連加算のハードルが厳格化されるとともに、達成へのインセンティブも高まることは間違いない。調剤技術料引き下げで生じる財源が活用される可能性もあると考えている。(2019/09/13)

〇現行制度下では、医療機関が30日以上の投薬を行った場合、処方料・処方箋料が40%に減額される。病院の外来数抑制のために、一時は長期処方を推奨していたような記憶があるが、いつからか方向性が変わったようだ。処方料・処方箋料に係る通知では、「長期の投薬を行うに当たっては、長期の投薬が可能な程度に病状が安定し、服薬管理が可能である旨を医師が確認するとともに、病状が変化した際の対応方法及び当該保険医療機関の連絡先を患者に周知する」という記載があり、暗に長期処方には慎重になってくださいよ、というような書きぶりだ。厚労省は長期処方反対派になったのだろうか。また、長期処方に絡むところでいくと、分割調剤という機能不全の仕組みが存在する。リフィル処方への布石にしたいという厚労省の思惑が見え隠れするも、医療機関、薬局、そして患者にとって経済的にも利便性においても全くメリットの無い分割調剤が機能するハズがない。かと言って、リフィルや分割調剤に手厚いインセンティブを設定すれば、医療費圧縮につながらない。(2019/09/14)

〇フォーミュラリーに係る診療報酬は新設されるのだろうか。主導権獲得を狙うステークホルダーが各々の思惑でそれぞれの取組みによって外堀を埋めようとしている。フォーミュラリーを策定することの第一義は、有効性と安全性の観点から各々の患者にとって真に必要となる医薬品を使用することにある。その際、費用対効果も考慮されることが望ましい。本来であれば、英国のように医薬品のエビデンスと費用対効果を厳格に審査する第3者的機関の存在が必要である。しかし、残念ながら日本では、主に高額薬剤を対象として費用対効果を検証する機関がようやく今年度からスタートしたばかりで、既存薬まで手が回る状況にない。点数新設については慎重論を唱える委員もいるようだが、私も同意見。その理由は、既存の枠組みだけで十分にフォーミュラリーへの対応が可能と考えているからだ(参照:「フォーミュラリー加算は不要だ!!!」)。(2019/09/15)



病床数の過多は入院医療費の増大を招く。それと同様に、高額医療機器への設備投資はやはり外来医療のコストアップに繋がる。使用しない医療機器を購入する医療機関は存在しない。設備投資したからには、念には念を入れて活用してみるのが当然だ。日本は人口100万人当たりのCT、MRI台数が世界一位。施設の統合や機器の共同利用が進まない限り、画像診断関連の診療報酬には圧力が掛かると考えている。(2019/09/17)












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