病院薬剤師の出向研修は拡大するのか

2024.02.24

令和6年度診療報酬改定では、新人病院薬剤師の出向研修による人材育成を評価する「薬剤業務向上加算」が新設される。

A244 病棟薬剤業務実施加算(1 病棟薬剤業務実施加算1(週1回)120点)を所定点数とする加算となる。

答申について(2024年2月14日)より

自院の病院薬剤師を他の病院へ出向させ、地域医療に係る業務等を実践的に修得させる体制を整備する医療機関を評価するものだ。

病院薬剤師不足が訴えられる現状で、そのように余裕のある医療機関があるのか不明だが、中医協総会の資料を見る限り、実例(下図)に基づいた評価であることが分かった。


中医協 総-3  5 . 1 1 . 1 5 


なぜにこのような加算の新設案が浮上してきたのかと問われれば、それは日本病院薬剤師会の武田会長の取り組みが大きく貢献したと言えるだろう。

武田会長は、就任直後から薬剤師派遣制度の構築を後押しする取り組みを進めてきた。

地域医療介護相互確保基金等を活用し、基幹病院が行政との協力の下で、中小の病院へと薬剤師を派遣することで、地域偏在の解消を図るとともに、派遣された薬剤師は大病院の薬剤業務以外の経験を積むことができるような仕組みを作ろうと尽力されてきたのだ。

その成果が今回の加算新設である。

ちなみに、この取り組みを検討する場として設置された「病院薬剤師確保策に関する特別委員会」の委員長は金沢大学病院薬剤部長であり、今回のエビデンス構築に尽力されたことが推察される(参考:武田会長、「薬剤師派遣指針」を作成~偏在解消へ制度構築後押し【日本病院薬剤師会】、薬読、2022年8月31日)。

もしも、「薬剤業務向上加算」が限られたエビデンスで新設された加算だとすれば、今後どのように普及していくのか、その実効性に疑問がないわけではない。

幸い、厚生局への届出が必要な加算であるため、6月以降のデータでぜひ検証してみたいと考えている。


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