★骨太方針に向けて 〜規制改革推進に関する答申〜

2023/06/09

来週には骨太方針が閣議決定される見込みのため、雑な仕事ではあるが急ピッチで各種答申の抜粋をアップする。

ただのコピペだ。





3.医療・介護・感染症対策
我が国の医療・介護制度が中期的に直面する最大の課題の一つは人口構造の変化である。世界最長の寿命を誇る高齢社会の中で医療ニーズは更に増加する一方で、生産年齢人口は減少し、2021年から30年で更に約3割急減すると見込まれている。
このような中で、国民が健康寿命を延伸し、どの地域に住んでも必要な医療サービスや介護サービスを選択し、享受できる環境を「患者本位・利用者本位」の考え方の下に再構築することが求められる。このような取組は地域の活性化にも資することはもちろんであるが、世界の人口構造もまた我が国を追いかけるように高齢化しつつある中で、世界に新たなモデルを示し、関連サービスを輸出する機会につながることにもなる。
このような課題解決は3つの軸で考察することができる。すなわち、デジタルヘルスによって予防や重症化防止等を実現することで、結果的に、医療・介護制度への負担を軽減する。次に、タスク・シフト/シェアによって、地域の医療関係職種の偏在に対応する。最後に、個別の医療機関や介護施設等の生産性向上、処遇改善を図る。そのための規制・制度改革が必要である。
まず、第一にデジタルヘルスの推進である。新型コロナウイルス感染症(以下「新型コロナ」という。)は社会に大きな影響を与えたが、逆説的には、オンライン診療等の有効性を証明し、普及させた面もある。こういった患者が必要な医療を、対面であれオンラインであれ、現場で患者と医師等が相談して選択可能となるような環境の整備を更に推進する必要がある。また、医療の質を上げ、創薬等を進めるためにはリアルワールドデータ(RWD)など医療データの利活用は喫緊の課題である。
例えば、イスラエルは医療データの利活用によって2ヶ月でワクチンの効果を論文化できた。一方で、我が国ではリアルワールドデータの活用例はいまだ乏しく、ドラッグラグの再燃も指摘されている。SaMD(SoftwareasaMedicalDevice:プログラム医療機器。医療機器プログラム(医療機器のうちプログラムであるものをいう。)又はこれを記録した記録媒体たる医療機器をいう。以下同じ。)の開発も諸外国に比べて大幅な遅れが指摘される。
第二に、医療分野におけるタスク・シフト/シェアの徹底を通じた、医療関係職種の偏在への対応である。
在宅医療を利用している患者(多くは高齢者)は、複数の慢性疾患を有することも多い。このため、最適なタイミングで必要な医療が提供できないために患者に生じるリスク・不利益を最小限にする必要がある。現実には、多職種間の「連携」のみでは対応できないとの指摘も多く、医療関係職種が、それぞれ自らの能力や専門性を踏まえつつも、各地域において、不足する専門職種のタスクを、充足する他の専門職種が補うことで、患者の被る不利益を最小化でき、また、特定の機関や特定の個人に負荷が集中することを回避することができるとの指摘がある。
第三に、生産年齢人口が急減していく中で、医療機関や介護施設等における生産性の向上や働き方の多様性への配慮である。子育て、介護等でフルタイムでは働けない方も増加し、多様な働き方を求める声もある。人手不足によって勤務環境が悪化し、それが更なる人手不足を呼ぶような悪循環を断ち切るため、ロボット等でも対応可能なものはロボット等によることとするなどの合理的な運営を通じて、生産性を向上させ職員の処遇を改善していく取組が必要である。
なお、これら医療・介護分野における規制・制度改革を進めるに当たって、営利企業の利益偏重を懸念する声がある。これらの分野では安定的なサービス供給が求められるため、利益のみが企業行動の基準となるべきではない。他方で、松下幸之助が「いくら儲けようと思っても、それに値するような仕事をしていなければお金はついてこない。儲けというのは、〝おまえ、もっとしっかりやれよ〟という世間の声でもある。だから、潤滑油であるお金のみのために仕事をしてはいけない。お金はどこまでも道具であって、目的はあくまで人間生活の向上である」というとおり、企業活動の原点は人間生活の向上にあることを十分に踏まえつつ、営利企業だからこその知恵も最大限活用していくべきである。
高齢化する世界の先行きを照らす灯台として、我が国は、医療・介護分野における規制・制度改革を世界に先駆けて進めていく必要がある。
各実施事項において「※」を付した事項については、厚生労働省など関係府省において成案を得て決定を行う前に規制改革推進会議で議論等を行うことを予定している。


(1)デジタルヘルスの推進①-データの利活用基盤の整備-

<基本的考え方>
医療等データ(電子カルテ、介護記録等に含まれるデータ、死亡情報その他の個人の出生から死亡までのデータであって診療や介護等に一般的に有用と考えられるデータをいう。以下同じ。)は人が自らの身体について知る手段であり、適切な医療やケアを受けるための不可欠の前提でもある。患者であれ健康な者であれ、その医療等データを地域の医療機関や介護事業所等で適切に共有されることによって、より質の高い医療の提供やケアを受けることができる。また、受診や検査によって得られた医療等データは、感染症対策等の公衆衛生、医療の技術革新(医学研究・医薬品開発等)、医療資源の最適配分、社会保障制度の持続性確保(医療費の適正化等)などに活用され、結果として、自らやその子孫を含め社会全体が裨益することが期待できる。諸外国においては、例えばイスラエルには全人口をカバーするデータ基盤が存在し、ワクチンの初回投与から僅か2か月で120万人という大規模なデータが論文化され、政策や医薬品開発の重要な判断材料になったという事例も存在する。このように医療等データは貴重な情報資源であり、我が国にはNDB(レセプト情報・特定健診等情報データベース)など世界に冠たる巨大なデータベースもあるが、現時点では十分に利活用されていない。
医療分野に限らない、各種の統計については、実証的な研究やEBPM等の観点からも有効であり、実際、諸外国においては、類似のデータを基礎として、個人への補助と政策効果に関する研究など多くの研究が行われている一方で、我が国では事例が非常に少ない。その原因として、データ提供に多大な時間とコストを要することが指摘されているところである。このような状況を踏まえ、医療等データや統計データが持つ価値を最大化し、我が国の医療・介護やEBPMなどに生かすための利用環境を整備する必要がある。
以上の基本的考え方に基づき、以下の措置を講ずるべきである。

<実施事項>
ア医療等データの利活用法制等の整備 【令和5年度以降速やかに措置】
厚生労働省は、医療・ケアや医学研究、創薬・医療機器開発などに医療等データを円滑に利活用することを通じて、国民の健康増進、より質の高い医療・ケア、医療の技術革新(医学研究、医薬品開発等)、医療資源の最適配分、社会保障制度の持続性確保(医療費の適正化等)、次の感染症危機への対応力の強化などにつなげていくため、今般の新型コロナへの対応も踏まえ、医療等データに関する特別法の制定を含め、所要の制度・運用の整備及び情報連携基盤の構築等を検討する。個人情報保護委員会は、上記検討について個人の権利利益の保護の観点から助言等を行うとともに、上記検討により明らかになった医療等データの有用性及びその利活用に関する必要性に配慮しつつ、個人情報の保護に関する他の分野における規律との整合性等を踏まえ、個人情報保護法の制度・運用の見直しの必要性を含めて、所要の検討を行う。厚生労働省及び個人情報保護委員会は、これらの検討を行うに当たっては、個人の権利利益の保護のため必要かつ適切な措置を講ずる必要があることに留意するとともに、次のⅰ~ⅶに留意するものとする。
ⅰ一次利用(医療等データを当該医療等データに関連する自然人の治療及びケア等のために利用することをいう。以下同じ。)について、①患者の診療に当たる医師等が、当該患者が過去に受診した他の医師等に対して、過去の診療内容等について照会しようとする際に同意の取得が困難な場合があり、効率的に情報共有ができない事例があるという指摘、②各地の地域医療情報連携ネットワークにおいても、同意取得負担等が、当該地域医療情報連携ネットワークが対象とする圏域の人口に対する普及率が低迷している一要因であるという指摘、③高齢人口の増加により医療・介護職の適切な確保が必要になることによって、①及び②のような問題は医療のみならず介護分野も含めて更に深刻になることが予想されるとの指摘及び④アメリカ合衆国の連邦法やEUの規則では、一次利用のために必要な医療機関等の間での第三者提供について、当該患者に対する医療の提供等に関する契約に係る同意と別には、必ずしも同意を求めていないとの指摘を踏まえ、患者等に対する適切な診療やケア等の目的に限り、必要な医療等データを医療関係職種や介護職員等限定された範囲で、当該患者等の明示の同意なく提供し得る必要があるとの指摘があること。これらを踏まえ、検討の際には、①適切な治療及びケア等が確保される患者の利益を含めた観点から、明示の同意を必要とする範囲、②明示の同意が必ずしも必要がないこととするとしても、単純に明示の同意を省略するのではなく、明示の同意以外の措置を利用した医療等データに関する個人の権利利益の保護水準の担保、③当該患者等が希望する場合に適切な医療等の提供の目的に照らした共有の停止の請求及び④共有の停止を行う範囲等の論点について考慮する必要があること。
ⅱ二次利用(医療等データを医学研究その他の当該医療等データによって識別される特定の個人のみを対象としない目的で利用することをいう。以下同じ。)について、我が国において医学研究や創薬、医療機器の開発等に利用し得る民間のリアルワールドデータが欧米に比較して少ないとの指摘があり、加えて、研究者、製薬会社等は医療等データの提供を受けるために個別に医療機関等と交渉する場合があるという実態やEUの動向を踏まえ、例えば医学研究、創薬・医療機器開発など人々のQOLの向上に重要な役割を果たし、公益性があると考えられる目的のためには、一定の仮名化を行った医療等データを研究者等(仮名化処理を行える主体は医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律(平成29年法律第28号)の認定事業者に限らない。)が二次利用に用いること(以下「特定二次利用」という。)を、必ずしも患者等本人の同意がなくとも行うことを可能とし、大量の医療等データを対象とする円滑な特定二次利用を実現することを含め、国民の健康増進、より質の高い医療・ケア、医療の技術革新(医学研究、医薬品開発等)、医療資源の最適配分、社会保障制度の持続性確保(医療費の適正化等)等の観点から実効的な制度・運用の整備を検討する必要があること。また、現在の個人情報保護法上の個人データの第三者提供に係る例外規定の制度又は運用については、上記の課題解決に照らして必ずしも十分な解決策となっていないとの指摘もあること。他方、検討の際には、①医療等データを取得した者(適法に取得したか否かを問わない。)が差別など本人の不利益となるような利用を行うことを禁止するとともに、医療等データの漏洩等が適切に防止されること等により、個人の権利利益を保護するために必要かつ適切な措置が講じられること、②特定二次利用について第三者機関を設けて公益性を審査する場合は、当該第三者機関に患者の代表者を含める等、患者の意見を反映すること及び③自らの医療等データの利用を望まない者に対して、特定二次利用の円滑な運用を著しく損なわない範囲で、その利用の停止を請求できる権利を付与すること等の論点について考慮する必要があること。
ⅲ円滑な特定二次利用を確保するためにも、少なくとも医療等データのうち特定二次利用に供される可能性のある外部出力データに対しては、病名、検査項目、薬剤、用法等のコード体系、項目値の単位とその表現方法、データのフォーマット、通信手順等の標準化を電子カルテ等のベンダーなど適切に対応し得る者に対して義務付けることや、そのような標準化が行われた電子カルテの導入に係る関係者のインセンティブを考慮した上での対応を含め検討を行う必要があるとの指摘があること。
ⅳ一次利用に加え、特定二次利用のため、医療機関、製薬会社・医療機器メーカー、研究者、行政機関等が必要な医療等データに円滑にアクセスし、利用できる公的な情報連携基盤の整備(オンライン資格確認等システムの拡充や電子カルテ情報交換サービス等の整備等)を計画的に進めるための工程表に基づき、進捗を確認する必要があること。
ⅴ公的な情報連携基盤の設計に当たっては、①一次利用に供された医療等データに必要な仮名化等を行った上で、自動的かつ長期にわたって特定二次利用を可能な仕組みとすること、②特定二次利用の頻度が高いと考えられる一定の医療等データについて、NDB等の仕組みを参考にし、公的に収集し、利用に供すること及び③少なくとも公的資金が投入され、収集され、構築された医療等データのデータベースについて、利用者の一定の費用負担の下に、特定二次利用を行うこととする規律を整備することの必要性について検討すること。
ⅵ一次利用又は特定二次利用のために医療機関等がその医療等データを公的な情報連携基盤に提供した場合において、当該医療等データの漏洩等が生じた場合、個別の医療機関が公的な情報連携基盤に対して監督等を行うことは困難であることを踏まえて、医療機関と公的な情報連携基盤等の運用主体の責任関係及び役割を整理し、必要な措置を講ずる必要があること。
ⅶ医療等データの利活用に当たって、本人の権利利益を適切に保護する独立した監督機関が必要であること。

イNDBの利活用の容易化等 【a:令和5年上期措置、b,d~f:令和5年秋措置、c:令和6年秋措置、g:①令和5年度措置、②令和5年度検討・結論、h:令和5年度検討・結論】
厚生労働省は、高齢者の医療の確保に関する法律(昭和57年法律第80号。以下「高齢者医療確保法」という。)に基づくNDBに収載されたデータ(以下「NDBデータ」という。)の大学、民間事業者等の研究者その他の利用者(以下本項において「研究者等」という。)への提供(高齢者医療確保法第16条の2)等の迅速化及び円滑化を図り、医療サービスの質の向上につなげていくため、以下の措置を講ずる。
a厚生労働省は、NDBデータの利用を行おうとする者に対して、NDBデータの項目及びその構造等の理解を助け、NDBデータを効率的に解析し得るよう、そのサンプルデータを公開する。
b厚生労働省は、NDBデータの利用を行おうとする者が探索・試行的にデータ解析することを可能とするため、トライアルデータセット(NDBの各年1月、4月、7月及び10月分から無作為に数%程度抽出する等の処理をしたものをいう。以下同じ。)又は特別抽出(研究者等の指定した抽出条件に従ってNDBデータをNDBから抽出することをいう。)の承認を受け当該研究者等に提供されたデータに対する医療・介護データ等解析基盤(HIC:HealthcareIntelligenceCloud)を通じたリモートアクセス(国が指定する特定の施設に限定せず、研究者等の自宅や研究室等からセキュリティレベルを保ったまま調査票情報等を格納するシステムにアクセスし、分析・集計を行うことができるアクセス方式をいう。以下同じ。)による解析を可能とする。なお、トライアルデータセットの利用申請に関する審査については、匿名医療情報等の提供に関する専門委員会(以下「専門委員会」という。)における審査項目を減らすなど、審査を簡略化するものとする。
c厚生労働省は、解析用に処理したNDBデータ(ブラックリスト方式で個人特定の可能性のある項目を匿名化する等の処理をしたもの)に対するリモートアクセスを、以下の点に留意しつつ可能とする。あわせて、専門委員会による審査の効率化等を行い、利用申請から申請者が実際にデータの利用を開始し得るまでに要する期間について、平均で390日を要する現状から、原則7日(研究者等側の都合に要した期間は除く。)とする。また、現状の申請件数を踏まえ、当面月1回を設定するが、今後申請件数が増えれば複数回設定する。※
特定の商品又は役務の広告又は宣伝を目的とする利用、承諾された利用目的以外の利用、特定の個人を識別する目的での利用その他の不適切利用をオンラインで監視可能な解析環境を構築すること。なお、研究者等がNDBデータを利用する場合を含め研究を行うに当たっては、探索・試行的なデータ解析を行うことが通常であることに留意する。
研究者等による、厚生労働省等に対するリモートアクセスの申請手続等をオンラインで行うことを可能とすること。
研究者等が希望する場合に、NDBデータの専門家等が抽出条件のアドバイスを行う等の支援体制を構築するとともに構造化されたデータを整備するなど解析環境を整備すること。
d厚生労働省は、NDBデータの利用の要件として高齢者医療確保法第16条の2に定める「相当の公益性を有すると認められる業務」について、特定の商品等の広告・宣伝を除く、医薬品や医療機器の創出又は改善に資する調査、研究又は開発(製薬企業を含む民間事業者等による医薬品安全性調査、市販後の有害事象のエビデンス収集等の研究を含む。)に利用可能であることを明確化する。※
e厚生労働省は、NDBデータの利用に関して、「匿名レセプト情報・匿名特定健診等情報の提供に関するガイドライン」(令和2年10月厚生労働省)において利用を行った研究者等に対して「他の研究や政策利用等を阻害するような特許の取得を禁止する」とされていることについて、当該記載は特許法(昭和34年法律第121号)第32条の不特許事由と同様の趣旨であり、NDBデータの利用による研究を基礎とする場合であっても、公の秩序、善良の風俗又は公衆の衛生を害するおそれがない限り、特許を受けることが可能であることを明確化する。
f厚生労働省は、学会誌への投稿手続が進行している場合など一定の場合は利用期間の延長が可能であることを明確化する。あわせて、利用期間の延長手続によって延長可能な期間が運用上1年以下となっている現状に対し、必要に応じて2年以上の延長が認められることを明確化する。
g厚生労働省は、NDBオープンデータ(診療行為、処方薬、健診項目等について、全国レベルで集計を行った集計表をいう。)について、個人情報の保護等を引き続き図るとともに、利用による研究等を精密化する観点から、①各セルにおける患者数の該当数値が0である場合にも公表データにマスキングを行っている現状について、当該セルの該当数値が0であることを明らかにすることによって、他のセルにおいて10未満の患者数であることが必然的に明らかとなるケースを自動的に判別するプログラム開発を行うことによって、マスキングの範囲を減らす運用を実施し、あわせて、②各セルにおける医療機関等の施設数が3未満となる場合についてマスキングを行っている現状について、マスキングを行わないことを基本に検討し、結論を得る。※
h厚生労働省は、社会保険診療報酬支払基金(以下「支払基金」という。)が行う、提供申出者の指定した抽出条件及び集計条件に従ってレセプトデータ等を抽出し、一定の集計処理を加え集計表の形式で提供する情報提供サービスにおいて、医療機関の施設数が3未満となる場合にマスキングを行っている現状について、個人情報の保護等を引き続き図るとともに、利用による研究等を精密化する観点から、マスキングを行わないことを基本に支払基金と連携しながら検討し、結論を得る。※

ウ公的統計の調査票情報の円滑な二次的利用の確保 【a:令和5年度上期措置、b:(平均1か月以内での提供)令和5年度措置、(総務省が所管する統計等は平均1週間以内、遅くとも4週間での提供)令和6年度措置、(総務省以外が所管する統計は特段の事情がある場合平均1週間以内、遅くとも4週間での提供)令和7年度措置、c:(前段)令和5年上期措置、(後段)令和6年上期措置、d:(前段・実証実験の開始)令和5年7月末までに措置、(前段・相当数の総務省所管統計についてリモートアクセスの開始)令和5年度措置、(中段)令和7年度措置、(後段)令和6年度措置、e,g:令和5年度検討・結論、f:令和5年上期措置、h:令和5年度措置】
総務省及び統計所管府省庁(大規模な統計調査を行う独立行政法人等を含む。
以下同じ。)は、学術研究の発展及びEBPMの推進を図る観点から、統計法(平成19年法律第53号)に基づく基幹統計及び一般統計等(以下「公的統計」という。)の調査票情報の研究者、各府省庁その他の利用者(以下「研究者等」という。)への提供(統計法第33条及び第33条の2。以下「二次的利用」という。)
を迅速化し、及び円滑化するため、必要なリソースを確保の上、以下の措置を講ずる。具体的な検討に当たっては、統計調査に対する国民の信頼や協力を確保するため、個人情報等の適切な保護を確保する必要があることに留意する。
a総務省は、統計所管府省庁がその所管する公的統計の調査票情報を、光ディスクを利用して二次的利用に供する場合に要する審査を標準化し、及び効率化するため、審査の趣旨及び実施方法を明確化するマニュアルの作成並びに利用申出の様式の統一を行い、所要のシステム開発に着手する。その際、以下の点を踏まえるものとする。※
利用申出の様式の統一に当たっては、申出に係る変数が多数の場合には、いわゆる「塗り絵」作業(毎年度の調査票に係るデータレイアウトの中で、研究者等が申出に係る変数に色付けする作業をいう。)等に要する研究者等の手間・負担を軽減するため、研究者等が作成予定の統計表(集計様式)や分析出力表(論文等において結果的に公表されない可能性があるものを含む。)(以下「統計表等」という。)のイメージを示しつつ、「令和○年度から○年度までの△△統計調査中の××を除く全ての変数」といった簡易な指定方法もあり得ることを明確化すること。
統計所管府省庁が「公益性」(統計法第33条及び第33条の2)を審査するに当たって、競争的研究費(科学研究費助成事業、厚生労働科学研究費補助金等)その他実施に要する費用を府省庁(所管する独立行政法人を含む。)が公募の方法により補助する調査研究又は府省庁(所管する独立行政法人を含む。)
の委託による調査研究については、統計所管府省庁においてはその旨の外形的な確認のみを行うものであり、具体的な研究内容に踏み込んで公益性の有無に関する判断を行うものではないことを明確化すること。
提供対象となる変数が「必要最小限となっており、不要と考えられるものが含まれていないこと」(「調査票情報の提供に関するガイドライン」(平成20年12月24日総務省政策統括官(統計基準担当)決定)第2の3(3)ウ)に関する統計所管府省庁の審査について、研究内容には立ち入らず、客観的・外形的に判断するものであることを明確化すること。また、個別の審査に当たって、研究者等が研究開始前の時点で予定している統計表等を統計所管府省庁職員が確認し、当該統計表等に記載される変数(以下「利用予定変数」という。)の全て、当該研究者等が当該研究を行うための利用予定変数のいずれかに代えて用いる可能性があるとする変数の全て及び制御変数として用いる変数の全てを提供することを明確化する方向で検討すること。
研究・論文作成において必要となるプライバシー保護策は研究者等が適切に実施することとし、統計所管府省庁の審査においては、①研究者等が作成する統計表等において、個人等の識別・特定が回避されることを論文等における秘匿措置の内容の疎明などの手段によって確認するとともに、②提供・閲覧される調査票情報自体の管理について、プライバシー保護のための適切な管理等が研究者等において行われることを初回利用時の管理状況等の確認に基づく資格認定、誓約の徴取その他の手段によって確認するものであることを明らかにすること。
光ディスクによる調査票情報の提供に代えてオンラインストレージによるデータの送信その他のオンライン上での提供を研究者等が選択可能とすることを検討すること。
b統計所管府省庁は、aの措置の実施その他の方策により、統計所管府省庁が利用申出から調査票情報の提供までに要する期間(以下「審査期間」という。)を、令和5年度中に平均1か月以内、令和6年度中(総務省を除く統計所管府省庁が所管する統計であって、過去の二次的利用件数が乏しいなど特段の事情がある統計に限り令和7年度中)に平均1週間以内、かつ、遅くとも4週間に短縮するものとし、総務省はその遵守状況を適切に把握する。また、この過程において、総務省が所管する統計については、その審査期間を、令和6年6月末までに当該統計に関する申出総件数の半数について、また、令和6年12月末までに当該統計に関する申出総件数の全てについて、遅くとも4週間に短縮する。
なお、統計所管府省庁における審査期間の短縮に当たっては、二次的利用ニーズを踏まえ、優先順位を付けて審査期間の短縮を図るものとする。※
c総務省は、公的統計の調査票情報の提供に関する研究者等向けの一元的な相談窓口を設置し、研究者等に対する必要な助言、申出のサポートを行うとともに、必要に応じて、統計所管府省庁に対して、個別の申出に対する処理状況の確認、迅速化の要請、技術的助言その他必要な措置を講ずる。あわせて、総務省は二次的利用に関する統計所管府省庁の審査状況を一元的に管理し、また、その概要を公表し、必要に応じて、統計所管府省庁に対して適時に助言等を行うこととし、所要の情報システムの開発の着手その他所要の措置を講ずる。※
d総務省は、個人情報等の保護水準の向上や研究者等の場所の制約のない働き方を推進する観点から、研究者等による公的統計の調査票情報に対するリモートアクセスを早期に可能とすることとし、その技術的課題を整理するための実証実験を令和5年7月末までに開始し、相当数の総務省所管統計について令和5年度中にリモートアクセスを開始する。また、統計所管府省庁は、令和7年度末までに公的統計の全てについてリモートアクセスによる調査票情報の提供を可能とする。なお、総務省は、リモートアクセスを設計し実装するに当たって、事務の効率化の観点から、リモートアクセスのサーバーやデータベースをオンサイト施設と共通化することも併せて検討する。※
e総務省は、統計所管府省庁ごとに二次的利用に関する審査を行っている現状に対し、審査の標準化及び効率化を徹底する観点から、二次的利用を光ディスクの提供による場合、リモートアクセスによる場合のいずれについても、省庁横断的な審査体制の一元化を検討し、結論を得る。※
f総務省は、研究者等の二次的利用の円滑化等のため、公的統計に関するメタデータ(調査年ごとの公的統計の利用可能な変数の一覧及びその変数の定義等)の整理を加速するとともに、公的統計に関する全てのデータの機械可読化を推進するためのリソースの確保を含む工程表を作成する。あわせて、全ての公的統計の調査票情報のリモートアクセスによる提供に関する工程表を作成する。
g総務省は、複数の統計における調査票情報を回答者ごとに連結して多様な分析を行うことを可能とする観点から、諸外国の状況を踏まえ、関係府省庁の協力も得つつ、回答者を紐付ける方策について検討し、結論を得る。
h総務省は、地方公共団体に対し、その作成する公的統計(以下「地方公共団体作成統計」という。)の円滑な二次的利用を図るため、aからgまでの国の取組を周知し、必要に応じ、同様の対応について要望するとともに、地方公共団体の求めに応じて、地方公共団体作成統計をリモートアクセスの対象とすることを検討する。
(2)デジタルヘルスの推進②-デジタル技術を活用した健康管理、重症化防止-<基本的考え方>コロナ禍におけるオンライン診療やオンライン服薬指導に対する特例的な取組もきっかけとなり、オンライン診療など医療や介護現場におけるデジタル技術の活用は我が国でも少しずつ進展している。医療や介護分野におけるデジタル技術の活用は、患者にとって、「時間」や「距離」の制約を取り払い、適時に患者の自宅等での受診や、健康状態の管理を容易にし、「患者本位・利用者本位」の医療・介護サービスの実現に貢献する。あわせて、介護施設等にとっても、データ解析を通じ、生産性の向上に大きな役割を果たすものである。
以上の基本的な考え方に基づき、オンライン診療などデジタルを活用して患者に裨益するサービスを拡大するため、事業者等の予見可能性の向上などに資する以下の措置を講ずるべきである。

<実施事項>
ア通所介護事業所や公民館等の身近な場所におけるオンライン診療の受診の円滑化【令和5年措置】
厚生労働省は、個別の患者が居宅以外にオンライン診療を受けることができる場所について明らかにするとともに、デジタルデバイスに明るくない高齢者等の医療の確保の観点から、今般へき地等において公民館等にオンライン診療のための医師非常駐の診療所を開設可能としたことを踏まえ、へき地等に限らず都市部を含めこのような診療所を開設可能とすることについて、引き続き検討し、結論を得る。※

イ要指導医薬品についてのオンライン服薬指導の実現 【令和5年度検討・結論、結論を得次第可能な限り速やかに措置】
厚生労働省は、要指導医薬品についてのオンライン服薬指導の実施に向けた課題(令和4年度に検討し結論を得たもの)を踏まえ、要指導医薬品についてのオンライン服薬指導の実施に向けて、対象範囲及び実施要件を検討し、方向性について結論を得る。その上で、当該結論を踏まえた所要の措置を講ずる。その際、政府全体としてデジタル原則に基づいて対面規制の見直しが横断的に進められていることを踏まえるものとする。※

ウプログラム医療機器(SaMD)等の開発・市場投入の促進【a:引き続き検討を進め、令和5年度結論、b:令和5年措置、
c:令和5年度検討・結論、d~f:令和5年春検討開始、令和5年度結論、g:引き続き検討を進め、令和5年上期結論、h:令和5年度上期検討・結論、i:令和5年度上期措置】
SaMDは、我が国における医療水準の引上げや医師の働き方改革を推進し、地方の高齢者などを含め、全国どこに住んでいても高度な医療を受けることを可能とするなどの観点から、また、我が国経済の成長戦略の観点から、その社会実装は極めて重要な課題である。
規制改革推進会議では令和元年度から本件の議論を行っており、今後、数年間のうちに、SaMDの上市及び上市後の機能向上が欧米諸国と同程度以上に円滑に進められるよう、その開発・市場投入の促進を進めるため、以下の措置を講ずる。
a厚生労働省は、SaMDはソフトウェアであり、その物理的性質上、人体に対する侵襲性が低いことが一般的である一方で、早期の臨床投入により性能の向上が加速する場合があること、ライフサイクルが他の医療機器よりも相当程度短期的であるといった特性を有するため、SaMDの臨床現場における使用を早期に可能とする必要があることを踏まえ、SaMDに関する二段階承認制度を導入する方向(SaMD版リバランス通知を新たに発出することにより対応する場合を含む。)で検討する。その検討に当たっては、第一段階の承認については、非臨床試験で評価できる場合や探索的臨床試験が必要である場合の整理、標榜可能な臨床的意義の範囲など、SaMDの使用目的や機能等の違いに応じた検討を行う。なお、第二段階の承認に当たっては、治験による場合の他、リアルワールドデータなどを活用して有効性の確認を行い得ることとする。※
b厚生労働省は、SaMDの承認後の追加学習を通じた有効性向上のためのアップデートなど一定範囲のアップデートについて、SaMDの上市後の機能向上が欧米諸国と同程度に確保され、臨床現場に恩恵をもたらすことを目指し、①令和4年度の独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)の科学委員会における検討において、データを恣意的に操作できない等の一定の条件の下で、アップデート時を含む評価データの再利用を認めることについて結論を得たことを踏まえ、具体的な想定事例を含め、データの評価方法及び評価データの再利用に関する留意点を報告書に取りまとめて公表するとともに、②変更計画確認手続制度(IDATEN)の効果を向上させる観点から、必要な変更計画書について、様式の具体的な記載例及び医療機器の開発経験の乏しいスタートアップなどのニーズを踏まえたQ&Aを充実させる。※
cbの取組その他の取組によって、変更計画確認手続制度における変更計画の確認申請から確認完了に係る審査の標準的事務処理期間を新たに設定することとし、その際、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)における医療機器の各類型に応じた申請区分ごとの一部変更承認申請に係る標準的事務処理期間(4ヶ月から6ヶ月)より短い期間で設定する方向で、具体的な方策を検討し、結論を得る。※
d厚生労働省は、SaMDのライフサイクルの短期性を踏まえ、事業者が迅速に保険償還を受けられることで、革新的なSaMDの開発を可能とする観点から、SaMDについては保険外併用療養費制度の活用も含めた新たな仕組みを設ける方向で、保険適用の在り方を検討する。※
第一段階の承認後、事業者の選択に基づき保険外併用療養費制度の活用等を可能とすることにより、保険診療において使用できることとし、臨床現場で活用されながら第二段階の承認に向けた迅速なデータ収集を可能にする。
臨床現場での一定期間の使用実績を踏まえて償還価格の柔軟な見直しを行う。
e厚生労働省は、上市後の使用実績に応じて性能が継続的に向上していく可能性があるというSaMDの特性を踏まえ、保険点数を決定した後であっても、事業者の任意の時点における申込みに基づき、一定期間内の申請により当該保険点数の再評価を複数回実施することを可能とする方向で、現行のチャレンジ申請制度に関する特例の創設等を含め、検討する。なお、申請に対する厚生労働省の審査は、事業者のアップデートの実態に即した頻度で開催可能とする方向で、厚生労働省における所要の体制整備を含め、検討する。※
fSaMDの保険対象期間が経過した後も継続的に患者が当該製品を利用する場合や希少疾患を対象とする製品で製造販売の承認を少数の症例で取得している製品を利用する場合など、保険外併用療養費制度を活用して、患者が当該製品を利用するニーズがある。このため、厚生労働省は、SaMDを使用する患者が可能な限りその希望する医療機関において保険外併用療養費制度等を円滑に利用できる環境を整備するため、現行制度について、具体的な事例も踏まえつつ、望ましい在り方を検討する。その際、事業者が将来的に保険収載を目指す場合であっても利用可能な制度の在り方を検討するとともに、事業者のニーズに応じた迅速な対象追加が可能となる観点で検討を行う。また、可能な限り、患者が受診する医療機関で制度利用が可能となるよう、開発事業者と医療機関が円滑に連携できる仕組みとすることに留意する。※
gSaMDのうち医家向け医療機器に該当するものについては、医療関係者以外の一般人を対象とする広告を制限する広告規制(行政指導)が課せられる一方で、医療機器に該当しない機器については当該規制は課せられず、「悪貨が良貨を駆逐」する状態にあるとの指摘がある。これを踏まえ、厚生労働省は、良質なSaMDへの国民のアクセスを円滑化する観点から、一般人が利用することが想定されるSaMDについて、単なる性能等の情報提供にとどまらない、適正・安全に使用するための注意事項等も含めた、一般人が機器の選択を行うために必要な情報提供の在り方やそれを踏まえた広告規制の要否について、検討を行う。※
hSaMDは、他の医療機器の開発と異なり、スタートアップなどがごく少人数で開発・生産を行う内外の実情がある一方で、我が国では、医療機器の製造に当たり選任が必要となる国内品質業務運営責任者(以下「品責」という。)の要件を満たす人材が限られ、特に、ソフトウェア開発に関する知見を有する者は更に限られるとの指摘がある。このため、厚生労働省は、スタートアップ等によるSaMDの開発及び生産を円滑化する観点から、品責の資格要件の一つである3年以上の品質管理業務等の職務経験について、講習の受講等により代替することを可能とする方向で検討し、結論を得る。なお、当該検討に当たっては、SaMDについては、薬事法等の一部を改正する法律及び薬事法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備等及び経過措置に関する政令の施行に伴う関係省令の整備等に関する省令(平成26年厚生労働省令第87号)における経過措置として、平成26年から平成29年までの間、厚生労働大臣の登録を受けた者が行う講習を修了した者は、3年以上の品質管理業務等に従事した者とみなすこととされていたことを踏まえることとする。※
i厚生労働省は、遠隔医療のうち、看護師が医師の指示・監督の下、相談者と情報通信機器を活用して得られた情報のやり取りを行い、患者個人の心身の状態に応じた必要な医学的助言を行うサービスについて、看護師が回答し得る範囲を明確化する。その際、適切かつ円滑なサービス提供が可能となるよう、「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(平成30年3月厚生労働省)において遠隔健康医療相談(医師以外)で実施が可能とされている「一般的な医学的な情報の提供や一般的な受診勧奨」には、年齢、性別、BMIといった相談者の各種属性や発症時期、痛みの程度を踏まえ、一般的に可能性があると考えられる要因(通常は複数の要因)について情報提供を行うこと(受診の要否を含む。)が含まれることを明確化する方向で検討する。※

エ科学的介護の推進とアウトカムベースの報酬評価の拡充  【a,b:令和5年度措置、c:令和5年度検討、令和6年度結論・措置、d:令和9年度措置】
a厚生労働省は、科学的に妥当性のある指標を収集・蓄積及び分析し、分析結果を現場にフィードバックすることを目的に令和3年度に運用が開始された科学的介護情報システム(LIFE)について、現状では、介護事業所等にフィードバックされた情報の活用方法が明らかでないことなどの課題が指摘されていることを踏まえ、フィードバックされた情報の具体的な活用方法の周知、フィードバックの範囲について利用者個人の時系列のデータの追加などの改善を実施する。※
b厚生労働省は、LIFEへの介護事業所等の入力負担を軽減する観点から、入力項目の重複の解消、入力選択肢の不足への対応、曖昧な入力項目の定義の明確化等を、令和6年度介護報酬改定と併せて実施するための検討を進め、必要な措置を講ずる。※
c厚生労働省は、介護現場におけるデータ収集及びデータ分析を活用した効果的なPDCAサイクルを実現するために、先進的な取組をしている事業者の実態も踏まえ、LIFEの項目の見直し等に際して、介護現場及び学術的観点から新たな項目の候補を提案いただき、活用可能性等の検討を経て、介護報酬改定時等に関係審議会へ提案するサイクルの構築に向けた調査研究事業等を実施する。※
d厚生労働省は、自立支援・重度化防止に資するサービスの提供を推進していく観点から、介護報酬におけるアウトカム評価の在り方について、アウトカムを介護報酬に相当程度反映すべきとの要望が有ることに留意しつつ、関係審議会における議論を踏まえ、引き続き検討を行う。その際、高度なセンサーの利用等により一定期間のアウトカムについて一定の精度を確保して測定するなど先端的な事例が報告される一方で、アウトカムとしてどのようなことが望ましいのかの判断が必ずしも容易ではないといった課題も指摘されていることを踏まえつつ、LIFEで蓄積された知見も活用することとする。また、介護現場及び学術的観点から提案される情報について、専門家等による検討を経て、関係審議会において議論を行い、3年に1度の介護報酬改定につなげるサイクルを構築する。※
オ患者等の負担の軽減のための公費負担医療制度等に伴う審査支払業務等の見直し【a:(前段)令和5年度措置、(後段・所要のシステム構築)令和5年度に着手、(後段・同様の対応の要請)令和6年度に相当数の地方公共団体において同様の対応が行われ、その後同様の対応が行われる地方公共団体が段階的に拡大するよう措置、b:(前段)令和5年度検討・結論、結論を得次第速やかに措置、(後段・優先順位付け)令和5年度措置、(後段・必要な取組の実施)令和6年度以降速やかに措置】
aこども家庭庁、デジタル庁及び厚生労働省は、患者等が円滑に受診し、また、結果的に高額療養費等の限度額の把握を行い得ることとするため、公費負担医療、予防接種及び母子保健(妊婦健診等の健診を含む。)(以下「公費負担医療制度等」と総称する。)並びに地方公共団体が単独に設けた医療費等の助成制度(以下「地方単独医療費等助成」という。)に係る患者等の資格情報(受給期間及び対象である助成制度の種類を含む。以下同じ。)について、患者や医療機関等がマイナンバーカードにより資格情報の確認を可能とするために、令和5年度末までに希望する地方公共団体及び医療機関において実証を行い、実施に向けた課題を整理する。その上で、法律にその実施根拠がある公費負担医療制度等の全てについて、特段の事情があるものを除き、マイナンバーカードによる資格情報の確認を可能とするとともに、地方単独医療費等助成についても、患者や医療機関等がマイナンバーカードにより資格情報の確認を可能とするための所要のシステム構築その他環境整備を実施し、地方公共団体に対して同様の対応を要請する。※
bこども家庭庁及び厚生労働省は、aの状況を踏まえつつ、公費負担医療制度等に関する審査支払業務について、特段の事情があるものを除き、審査支払機関に委託することで、一時的な患者等の窓口負担をなくすとともに、地方公共団体や医療機関等の関係者の事務手続負担を軽減する方向で検討し、必要な措置を講ずる。また、乳幼児医療、ひとり親家庭医療、重度心身障害者医療その他の地方単独医療費等助成に関する審査支払業務についても、aの状況を踏まえつつ、地方公共団体の区域の内外を問わず、患者が一時的な窓口負担なく円滑に受診できるよう、当該地方単独医療費等助成の受給者数などの実態を踏まえ、優先順位を付けた上で、各地方単独医療費等助成の対象者に係る施策の関係省庁(こども家庭庁及び厚生労働省)において、審査支払機関への委託の拡大を含めた地方公共団体、医療関係者等との調整その他の必要な取組を行う。※
カ各種レセプト関連業務のDX化に伴う見直し 【a:令和5年度検討・結論、b:(前段)令和5年度措置、
(後段)令和5年度以降継続的に措置、c:令和5年度下期以降継続的に措置、d:(前段)令和6年度結論、(後段)令和6年度検討開始、前段の検討結果を踏まえて早期に結論】
aレセプトの再審査を効率化することで患者が迅速に高額療養費を算定することを可能にするとともに、医療機関や各保険者が被災した場合におけるレセプトの消失を防止するため、厚生労働省の「審査支払機能の在り方に関する検討会報告書」(令和3年3月29日)を踏まえ、レセプト原本の一元管理について厚生労働省が主体的に関係者との調整を進め、結論を得る。※
b厚生労働省は、支払基金において、レセプト等の審査を行う審査委員会の審査委員会費について、AIによるレセプト振り分け機能の採用による審査委員が審査する目視対象レセプト及び審査委員の審査従事時間の減少の効果を反映し、それに応じた金額が削減される仕組みが検討されるようにする。あわせて、厚生労働省は、支払基金の審査委員会費の透明性を向上させるため、都道府県審査委員会ごとの審査委員会費の額及びその内訳が毎年度公表されるようにする。※
c厚生労働省は、医療機関等による診療報酬の請求方法について、令和4年6月の規制改革実施計画を踏まえ令和5年3月に厚生労働省において取りまとめられた「オンライン請求の割合を100%に近づけていくためのロードマップ」が実効的なものとなるよう、必要な対策を講ずる。
具体的には、光ディスク等による請求や紙レセプトによる請求を継続しようとする医療機関等が提出するオンライン請求への移行計画や届出について、厚生労働省は、経過的な取扱いが必要なものと認められる事情や移行に向けた計画として記載すべき事項等を整理・明確化するとともに、医療機関等が必要な対応を早期に行うよう促し、提出された移行計画等が適切なものであることが確認されるようにする。※
d厚生労働省は、柔道整復療養費について、オンライン請求の導入及び柔道整復療養費の請求が原則オンライン請求により行われるために必要な措置を検討する。
あわせて、柔道整復療養費に関するオンライン請求の導入に関する検討結果も参考に、あん摩マッサージ指圧、はり・きゅう療養費について、オンライン請求の導入に向けた課題を検討し、早期に結論を得る。


(3)医療関係職種間のタスク・シフト/シェア等
<基本的考え方>
高齢者の増加、生産年齢人口の減少、歯止めがかからない地域の過疎化といった人口構造変化により、医療過疎の地域のみならず、それ以外の地域(大都市、地方都市)においても、地域によっては今後、医師、薬剤師又は看護師の不足がみられる場合も想定される。もはや、各地域において、十分な数の医療職が存在し、その専門能力に基づく地域に必要とされる医療サービスが提供できなくなっているとの指摘を直視する必要がある。

特に、在宅医療を受けている患者(多くは高齢者)は、複数の慢性疾患を有することも多い。このため、最適なタイミングで必要な医療が提供できないために患者に生じるリスク・不利益を最小限にするためには、専門職を含め在宅医療を担う関係者の連携が必要となるのは大前提である。一方で、現実には、多職種間の「連携」で対応するという主張は、既に20年以上行われているものの、我が国の人口構造が変化する中で、必ずしも十分な対応を行うことは既に困難となっているとの指摘もある。
その上で、医療関係職種が、それぞれ自らの能力や専門性を踏まえつつ、タスク・シフト/シェアを進めていくことを基本としつつも、各地域において、不足する専門職のタスクを、充足する他の専門職が適切に補うことで、患者の被る不利益を最小化できるとの指摘にも留意する必要がある。
検討に当たっては、医師・薬剤師・看護師などの医療関係職種は、患者のために互いの専門性を尊重し、「対等」な立場で情報交換等を行いながら、質の高い患者ケアを提供するという在り方が基本的な前提であることや医療安全の確保に留意するとともに、医療サービスの提供に伴う責任の所在を明らかにする必要がある。
以上の基本的考え方に基づき、以下の措置を講ずるべきである。また、検討に要する期間に長短があることを踏まえ、可能なものから直ちに実行する必要がある。
<実施事項>
ア在宅医療を提供する環境の整備  【令和5年度上期検討・結論】
厚生労働省は、地域で主たる責任を持って在宅療養者に対する診療に当たる「在宅療養支援診療所」を含め診療所からの往診について、診療所から半径16kmを超える往診が当該診療所からの往診を必要とする「絶対的な理由」がある場合に認められているところ、現実には、16km以内に医療機関が存在していても、やむを得ない事情で当該医療機関の医師が適時に往診できず、医療アクセスが困難な地域における患者の医療に支障が生じているとの指摘があることを踏まえ、地域の在宅医療の提供状況に応じ、16kmを超えた往診が可能となる「絶対的な理由」について、更なる整理・周知を検討する。加えて、診療所の管理者の常勤要件について、新たに管理医師を配置した上で診療所を開設することが困難であるとの指摘があることを踏まえて、地域の在宅医療の提供状況に鑑み、医療提供体制が不足していると都道府県が認める場合には、他の診療所の管理者がへき地や医師少数区域等の診療所の管理者を兼務可能であることの更なる整理・周知を検討する。※
イ在宅領域など地域医療における医師―看護師のタスクシェア  【a:令和5年度措置、b:①②令和5年度検討開始、遅くとも令和6年度措置、③(前段)令和5年度措置、③(後段)令和6年度検討開始、令和7年度結論、c:(前段)令和6年度及び令和7年度措置、(中段)令和7年度結論、(後段)令和7年度までの間措置】
a厚生労働省は、高い知識や技術を持つ看護師が在宅領域など地域医療において、多くは慢性疾患を持つ患者の生活に立脚した健康管理や予防に、その能力や専門性を発揮できる環境を整備し、患者、医師の負担を軽減するため以下の措置を講ずる。※
①厚生労働省は、在宅医療において、患者に対し適時に適切な医療が行われることを確保する観点から、看護師が医師の包括的指示を受けて行い得る業務を明確化するため、現場のニーズを踏まえて、包括的指示の例を示す。
包括的指示の例を作成するに当たっては、在宅療養者の症状変化に対して医師と看護師の適切な連携のもとに、既に提供されている薬剤の使用、検査、処置(抜糸抜鈎等)等の実施を妨げることがないよう留意するものとする。
②在宅医療など地域医療の現場において、虚弱高齢者に対する生活評価(入浴等)、認知機能評価、生活習慣病患者に対する指導等については、看護師限りで実施可能な行為の範囲が不明確であり、結果として医師に都度確認があるため、医師、看護師の双方にとって負担となっているとの指摘があることを踏まえ、適切な連携のもとに円滑に対応されている具体例を示す。
なお、具体例の提示に当たっては、状態変化等を踏まえた必要時の医師への報告や相談を妨げることなく、また、当該具体例以外を看護師限りで行ってはならないと誤認されないよう留意するものとする。
b厚生労働省は、現行の特定行為研修終了者の活躍の場が大病院に偏っているとの指摘を踏まえ、特に、地域医療(地域の小規模医療機関での外来看護や訪問看護など)で活躍可能な特定行為研修修了者の養成を促進し、医師不足が顕著な地域を始めとする各地でのケアの質を維持するため、以下の措置を講ずる。※
①現行の特定行為研修の受講に要する時間と費用は、一般の看護師や医療機関にとっては負担が重く、普及は現実的ではないとの調査結果が示された。
特定行為研修の時間数は、現在対象となっている特定行為を実施するための実践的かつ高度な理解力、思考力、判断力を身につけるために必要な内容であるが、看護師によっては既にこうした能力を備えている場合もあることから、その全部又は一部を、国の関与の下、講義履修などのプロセス評価のみならず、現場におけるアウトカム評価で代替することを可能とし、より多くの看護師が積極的に挑戦可能なものとする。あわせて、アウトカム評価が困難な部分については、短期集中型ではなく、看護師の日常業務の空き時間での長期にわたる研修を可能とし、あわせて、オンライン研修の活用を進める。
②実務上、特定行為の実施に必要な手順書が医師から必ずしも円滑に発行されない実態を踏まえ、関係団体の協力も得ながら医師に対し、手順書の理解促進のための周知・広報を図る。また、手順書を発行する医師の負担を軽減するため、医師が簡易に作成できる様式例の検討や看護師の裁量をより拡大するなど、現在の標準的な手順書例を改定する。
③特定行為(診療の補助)について、その運用状況と地域医療におけるニーズを現場の医師及び看護師等から把握し、特定行為の拡充について検討する。
c厚生労働省は、上記各措置を円滑に実施しつつ、①地域の在宅患者に対して最適なタイミングで必要な医療が提供できないため患者が不利益を被る具体的状況や②そのような具体的状況において医師、看護師が実際に果たしている役割や課題を令和6年度及び7年度に調査し、更なる医師、看護師間でのタスクシェアを推進するための措置について検討する。その際、限定された範囲で診療行為の一部を実施可能な国家資格であるナース・プラクティショナー制度を導入する要望に対して様々な指摘があったことを適切に踏まえるものとする。上記検討の間においても、離島・僻地等において特区制度を活用した実証の提案があった場合は、その結果も踏まえて所要の対応を行う。※
ウ在宅医療における円滑な薬物治療の提供  【a:令和5年度検討開始、令和6年度結論、b:令和5年度検討・結論、c:令和5年度検討開始、遅くとも令和6年度中に結論】
在宅患者への薬物治療の提供については、夜間・休日などを中心に、薬剤の投与に必要な医師の指示が得られないことなどにより、訪問看護師が訪問した際に患者が薬剤を入手できていないなど、患者の症状変化に対する迅速な薬物治療を受けられない場合があるとの声がある。在宅医療の実施状況については地域により異なることも踏まえつつ、在宅患者が適時に必要な薬剤(薬局では取り扱っていないことがあると指摘されている種類の輸液等を含む。)を入手できないことがないよう、次の措置を講ずる。
a厚生労働省は、医師から特定の患者に対する診療について包括的指示を受けた看護師(当該包括的指示に特定の薬剤の投与が含まれる場合に限る。)が夜間・休日を含め必要時に、医師に連絡がつかない事例や、在宅で看護師の同席の下で患者に対してオンライン診療(DtoPwithN)を行う場合など看護師が医師と別の場所にあって、かつ、医師が医療機関外で処方箋を円滑に発行できない事例が存在するとの指摘を踏まえ、在宅患者が適時に必要な薬剤を円滑に入手可能とする観点から、具体的にどのような地域にどの程度の頻度でどのような課題があるかについて現場の医師、薬剤師、看護師及び患者等に対して調査を行い、必要な対応を検討する。※
b厚生労働省は、在宅患者への薬物治療の提供の実態について、24時間対応を行うこと等を要件とする地域連携薬局の認定等を取得している薬局の一部において、現実には夜間・休日の調剤が行われていないことがあるとの指摘を踏まえ、必要に応じて実態を調査の上、必要な措置を講ずる。具体的には、地域の薬局において、夜間・休日を含む24時間対応が可能となるよう、輪番制の導入や日々の対応薬局の公表等を実施するとともに、その実施状況に応じて、その是正等を図ることの方策も含め、必要な対応を検討する。※
cbによっても24時間対応が可能な薬局が存在しない地域については、必要に応じて、薬剤師、看護師、患者等に対し具体的な課題を把握するための調査を行った上で、在宅患者に円滑に薬剤を提供する体制の整備に向けて、訪問看護ステーションに必要な薬剤(最低限の数量に限る。)を配置することも含め必要な対応を検討する。※
エ看護師不在時における在宅患者に対する円滑な点滴交換等  【令和5年度検討開始、令和6年度結論、結論を得次第速やかに必要に応じて措置】
厚生労働省は、地域における訪問看護師が適時に患者宅を訪問できないことによって、在宅の患者が点滴交換・充填、褥瘡薬の塗布等を円滑に受けられない事例が存在することや薬剤師による当該事例への対応可能性や課題を検討する必要があるとの指摘があることを踏まえ、①具体的にどのような地域にどの程度の頻度でどのような課題があるか、②なぜ訪問看護師が適時に訪問できなかったのかを明らかにした上で訪問看護師による課題の解決可能性が現実的にどの程度あるか、について現場の医師、薬剤師、看護師及び患者等に対して調査を行い、当該事例への実効的な対応策を検討し、必要に応じて措置を講ずる。※
オ薬剤師の地域における対人業務の強化(対物業務の効率化)  【令和5年度以降早期に検討・結論】
厚生労働省は、調剤業務の一部外部委託(薬局における調剤業務のうち、一定の薬剤に関する調製業務を、患者の意向やニーズを尊重しつつ、当該薬局の判断により外部に委託して実施することをいう。以下同じ。)の際の安全確保のために委託元や委託先が満たすべき基準や委託先への監督体制などの技術的詳細を令和4年度に検討し結論を得たことを踏まえ、調剤業務の一部外部委託を行うことを可能とするための法令改正を含む制度整備を早期に行うことを検討する。


(4)働き方の変化への対応・運営の合理化
<基本的考え方>
医療や介護サービスは人と人との対面、触れあいでこそ達成できる価値が他分野と比べても大きい分野である。他方で、生産年齢人口が減少する中では、置き換え可能な業務は可能な限り、ロボット等に置き換えていくとともに、マネジメントを徹底的に磨き上げていくことで、職員が働きやすく、やりがいのある環境を構築していく必要がある。また、介護や子育てなど様々な事情でフルタイムでの勤務は難しいものの、短時間内であれば働きたいとの希望を持つ方々も、医療・介護関係職種を含め多い。このような方々が医療制度、介護制度の中で活躍いただけるような環境整備も必要である。
以上の基本的考え方に基づき、以下の措置を講ずるべきである。

<実施事項>
ア介護サービスにおける人員配置基準の見直し  【a:令和5年度検討・結論、b:令和5年度措置】
a厚生労働省は、介護サービス種別ごとの管理者に係る人員配置基準について、経営能力を持つ人材には限りがあることを踏まえつつ、様々な介護サービスを行う複数の事業所を効率的に運営し、かつ、運営の生産性向上や職員のやりがいの最大化を図る観点から、同一の管理者が複数の介護サービス事業所を管理し得る範囲の見直しについて、社会保障審議会介護給付費分科会等での意見を聴き、結論を得る。その際、少なくとも次の事項の検討を含むものとする。※
主として管理業務を行う管理者について、例えば、指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準において、管理業務に支障がないと認められる場合に「同一敷地内にある他の事業所、施設等の職務に従事することができる」とされていることも踏まえ、サービス種別にかかわらず、例えば、同一・隣接又は近接の敷地に所在する複数の事業所について、管理者が兼務可能な範囲の見直し等を検討する。
b厚生労働省は、介護サービスの人員配置基準に係る地方公共団体による独自ルールの有無・内容等を整理し、公表することについて検討する。※
イ障害福祉分野における手続負担の軽減(ローカルルールの見直し等) 【a,e:令和5年度措置、b:(前段)令和5年度措置、(中段)令和5年度検討・結論、c:(前段)可能な限り速やかに検討を開始し、令和6年度結論、(後段)令和5年度措置、d:可能な限り速やかに検討を開始し、令和6年度結論、f:令和6年度措置】
aこども家庭庁及び厚生労働省は、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号。以下「障害者総合支援法」という。)に基づく指定障害福祉サービス事業者、指定一般相談支援事業者及び指定特定相談支援事業者並びに児童福祉法(昭和22年法律第164号)に基づく指定障害児通所支援事業者等、指定障害児入所施設等及び指定障害児相談支援事業者(以下これらを総称して「障害福祉サービス等事業者」という。)が、障害者総合支援法及び児童福祉法(その政省令、通知、事務連絡等を含む。以下同じ。)の規定に基づいて地方公共団体に対して行う手続について、その簡素化や利便性向上に係る国や地方公共団体に対する要望を随時に提出できる専用の窓口を設ける。当該要望については、障害福祉サービス等事業者、地方公共団体関係者及び中立的な学識経験者の3者のバランスのとれた員数によって構成される会議体で改善等の対応を検討し、内容、件数及び処理状況を整理し、公表する。地方公共団体に対する要望については、必要に応じて当該地方公共団体に対する助言等を行う。※
bこども家庭庁及び厚生労働省は、障害福祉サービス等事業者及び地方公共団体の意見も踏まえつつ、障害福祉サービス等事業者が障害者総合支援法及び児童福祉法の規定に基づいて地方公共団体に対して提出する指定申請関連文書、報酬請求関連文書及び指導監査関連文書について、標準様式及び標準添付書類(以下「標準様式等」という。)を作成する。その際、当該標準様式等については、押印又は署名欄は設けないことを基本とし、あわせて、地方公共団体に対して押印又は署名を求めることがないよう要請するとともに、先行して標準様式が定められている介護サービスと共通化可能な部分は共通化することを基本とする。
その上で、障害福祉サービス等事業者が、当該標準様式等を用いて手続等を行うこととするための所要の法令上の措置を講ずる方向で検討する。
なお、地方公共団体が地域の特性に照らして特に必要がある場合に、その判断によって、独自の規律を設けることを妨げないこととし、当該地方公共団体が当該独自の規律に係る申請・届出文書について独自の様式・添付書類を使用することを妨げない。※
cこども家庭庁及び厚生労働省は、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービス及び相談支援並びに児童福祉法に基づく障害児通所支援、障害児入所施設及び障害児相談支援の指定及び報酬請求(加算届出を含む。)に関連する申請・届出について、障害福祉サービス等事業者が全ての地方公共団体に対して所要の申請・届出を簡易に行い得ることとする観点から、bの標準様式等に関する検討結果を踏まえ、障害福祉サービス等事業者及び地方公共団体の意見も踏まえつつ、申請・届出先の地方公共団体を問わず手続を完結し得ることとするため、障害福祉サービス等事業者の選択により、電子的に申請・届出を可能とするためのシステムの整備について検討する。その際、特段の事情があり、当該システムの利用を困難とする地方公共団体については、なお従前の例によることを可能とする。また、地方公共団体ごとのシステムの利用の有無についてはこども家庭庁及び厚生労働省において公表する方向で検討する。
なお、システムの整備に関する検討の結果を得るまでの当面の間、こども家庭庁及び厚生労働省は、障害福祉サービス等事業者が、その選択により、デジタル技術であって適切なもの(電子メールや地方公共団体が作成したWEB上の入力フォームへの入力等を含む。)又は書面によって、申請・届出を行うこととするための所要の措置を講ずる。※
dこども家庭庁及び厚生労働省は、bの標準様式等に関する検討結果を踏まえ、障害者総合支援法及び児童福祉法の規定に基づく障害福祉サービス等事業者の届出であって、法人関係事項その他の事業所固有の事項以外の事項に関するものについては、届出手続のワンストップ化を実現する方向で検討する。その際、特段の事情があり、cのシステムの利用を困難とする地方公共団体については、なお従前の例によることを可能とする。また、地方公共団体ごとのシステムの利用の有無についてはこども家庭庁及び厚生労働省において公表する方向で検討する。※
eこども家庭庁及び厚生労働省は、障害福祉サービス等事業者が障害者総合支援法及び児童福祉法の規定に基づき行う必要がある申請、届出その他の手続に関する負担軽減に係る地方公共団体の取組状況や手続の利便性向上に係る地方公共団体の好取組事例を定期的に調査の上、公表する。調査に当たっては、地方公共団体ごとの手続のデジタル化の有無、押印廃止の進捗状況及び紙による申請書類の有無も含めて確認し、公表する。
fこども家庭庁及び厚生労働省は、bの標準様式等に関する検討結果を踏まえ、地方公共団体による独自ルールの明文化を徹底した上で、地方公共団体ごとの独自ルールの有無・内容を整理し、定期的に公表する。
ウ報酬制度における常勤・専任要件の見直し等  【令和5年度措置】
今後、我が国においては、高齢者の医療・介護需要が高止まりする一方、生産年齢人口は、地域によっても濃淡がありつつも全体として減少することが予想されること、育児・介護などを背景にフルタイムでの勤務が困難な労働者が増加していること、また、「非常勤あるいは兼任でも医療・看護・介護の質には問題が生じないのではないか」、「場合によっては、地域の中で、人材の融通を効かせる仕組みがあっても良いのではないか」との指摘があることも踏まえ、厚生労働省は、診療報酬改定及び介護報酬改定に当たって、常勤又は専任の有資格者の配置要件等について、質が担保された医療及び介護が提供されることを前提に、医療従事者及び介護従事者の柔軟な働き方の支援の観点から、必要な検討を行う。
あわせて、医療及び介護の分野において、サービスの質の確保を前提としつつ、センサー等のロボット等の導入を通じた生産性向上が促されるよう、必要な措置を検討する。※
エ医療・介護・保育分野における人材確保の円滑化のための有料職業紹介事業等の制度の見直し  【a,e:令和5年度措置、b:令和6年度検討、c:(前段)令和5年度検討・結論、(後段)令和5年度措置、d:令和5年度検討・結論、結論を得次第速やかに措置】
厚生労働省は、医療、介護(高齢者のみならず、障害者等に対するものを含む。
以下同じ。)及び保育分野(以下「3分野」という。)における人手不足を背景に3分野の求人者において、職業紹介事業者(以下「紹介事業者」という。)に支払う紹介手数料に対する負担感が強く、また、一部の3分野の事業者において短期間での離職が多いとの指摘があることを踏まえ、既に、「医療・介護・保育分野における適正な有料職業紹介事業者の認定制度」の創設、職業紹介事業者、求人者、労働者の募集を行う者、募集受託者、募集情報等提供事業を行う者、労働者供給事業者、労働者供給を受けようとする者等がその責務等に関して適切に対処するための指針(平成11年労働省告示第141号。以下「指針」という。)の改正によるいわゆるお祝い金の禁止、都道府県労働局への「『医療・介護・保育』求人者向け特別相談窓口」の設置、ハローワークにおける3分野のための人材確保対策コーナーの拡充などを実施してきたものの、依然として3分野の人手不足は深刻であり、また、3分野を扱う紹介事業者の有料職業紹介業務の質や、紹介手数料やいわゆるお祝い金などに関する問題も引き続き指摘されていることを踏まえ、次の措置を講ずる。
a厚生労働省は、3分野を扱う紹介事業者において、お祝い金その他これに類する名目で社会通念上相当と認められる程度を超えて金銭等を提供することを禁止する指針の規定や紹介事業者がその紹介により就職した者(期間の定めのない労働契約を締結した者に限る。)に対し2年間の転職の勧奨を禁止するといった指針の遵守が徹底されるよう、3分野の求人者向け特別相談窓口をより広く周知し、3分野の求人者からの相談を積極的に受け付けるとともに、3分野を扱う紹介事業者への集中的指導監督を実施する。なお、その際、紹介事業者による指針違反の具体的状況を求人者が把握することは困難であることを踏まえた相談受付を行うとともに、集中的指導監督に当たっては、紹介事業者の紹介先求人者等に対する調査を含め、より実効性のある調査手法を活用することとする。※
b厚生労働省は、aの集中的指導監督の効果を把握した上で、必要に応じ所要の措置を検討する。※
c厚生労働省は、求人者が紹介事業者を選択する際の参考となるよう、3分野を扱う紹介事業者により就職した者の離職や紹介手数料に関する統計データを適切に利活用することにより、実勢手数料の平均値及び分布並びに職種別離職率について、地域(紹介事業者数に応じて、都道府県又はより広域のエリア)ごと及び職種ごとに、毎年度公表する方向で細部を検討し、結論を得る。
厚生労働省の「人材サービス総合サイト」で公開されている紹介事業者ごとの離職状況について、「判明せず(人)」欄に多数を計上しており、離職率の正確な状況が明らかでない紹介事業者が存在することを踏まえ、当該欄に計上した人数が相当程度多い紹介事業者に対して、追跡調査を徹底させるとともに、これら離職者数の公表期間を、現行の2年から5年へ延長する。※
d厚生労働省は、求人者が適正な紹介事業者を選択できるよう、「医療・介護・保育分野における適正な有料職業紹介事業者の認定制度」について、更なる改善を図るため、3分野の求人者のニーズを踏まえ、6ヶ月以内の離職の場合に相当額の手数料の返還を行うことを含め、認定基準の追加等について検討し、結論を得る。その結果に基づいて必要な措置を講ずる。※
e厚生労働省は、ハローワークの人材確保対策コーナーを中心に、労働者が定着しない個々の理由に着目した求人者への支援強化を、関係機関と協力して実施する。また、業界団体と連携したイベントの開催等を積極的に実施するとともに、オンライン上での求人者・求職者双方の利用を推進する。
ハローワークが求職者支援のみならず求人者に対する支援機能をこれまで以上に発揮するとともに、介護施設等の合理的な選択を可能とするため、ハローワークごとの職種別の就職実績を毎年度公表する。※
オ法定健康診断項目の合理化等  【a:令和5年度検討開始、令和6年度結論、b:令和5年度上期措置】
a厚生労働省は、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)に基づき労働者の健康の保持増進のための措置として事業者が労働者に対して行うこととされている定期健康診断(以下「事業主健診」という。)について、各検査項目は最新の医学的知見や社会情勢の変化等を踏まえ、項目単独又は他の項目と併せて就業上の措置を行うためのデータとすることが期待できるものとして妥当性のある検査項目を設定する必要があると考えられることから、医学的知見等に基づく検討の場を設け、検査項目(検査頻度を含む。)及び検査手法について所要の検討を行い、結論を得る。※
b厚生労働省は、事業主健診の結果に基づき実施する就業上の措置及び保健指導(以下「事後措置」という。)について、小規模の事業場を中心にその実施が低調であるとの指摘があることを踏まえ、産業医の選任義務のない小規模事業場等の事業者による健診の結果を踏まえた適切な事後措置の推進のため、異常所見者については、医師等から意見を聴取し当該意見を勘案して就業上の措置を講ずること又は保健指導の実施に努める必要があることを周知徹底する。
カ新型コロナウイルス及び季節性インフルエンザを同時に検査可能な抗原定性検査キットの利用環境の整備  【a,b:措置済み】
自宅でも、新型コロナに加え季節性インフルエンザ(以下「インフルエンザ」という。)も同時に検査可能な抗原定性検査キット(以下「コンボキット」という。)の利用環境を整備することにより、通常の風邪とインフルエンザを患者において区別することで、発熱外来への来訪者を真に必要な方に限定することを通じ、必要な患者に対する適時適切な受診を確保することが期待できると考えられるため、以下の措置を講ずる。
a厚生労働省は、高齢者は一般的に重症化リスクが高いと考えられることを踏まえ、地域の発熱患者が急増し医療提供体制がひっ迫するおそれがある場合に備えて、特別養護老人ホーム等の高齢者施設において、入居者が自ら、若しくは、施設等の看護職員が鼻腔検体を採取・検査して、新型コロナに加えインフルエンザも同時に検査可能なコンボキットを円滑に利用できるための措置を直ちに講ずる。
b厚生労働省は、年末年始、年明けの厳寒期などに発熱外来の負担増大が予測されることを踏まえ、コンボキットのOTC化について早急に検討を行う。

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