クスリが飛んでやってくる🚁❓
2023/03/21
3月16日、国土交通省及び厚生労働省から「ドローンによる医薬品配送に関するガイドライン」が発出された。
この通知によって、ドローンによる処方薬の配送がまた一歩前進することになる。
ドローンによる医薬品配送関連の通知は過去にも何度か発出されているが、前回(2022年6月22日)はあくまでも実証実験に係るものであり、3月16日の通知でようやく実装段階へと進むことになる。
クスリが飛んでやってくる日がもうすぐそこかと思いきや、今回の通知では「ドローンを用いた医薬品の配送が最も適切な手段と考えられる場合に限りドローンを用いた医薬品の配送を行うこと」とされ、万人に適用される制度設計にはなっていないことが分かった。
ドローンによる医薬品配送に関するガイドライン(2023 年3月16発出)より転載
第1章 趣旨
本ガイドラインは、
卸売販売業者、店舗販売業者若しくは配置販売業者(以下「医薬品販売業者」という。)又は薬局が、医薬品販売業者、薬局又は医療機関(病院若しくは診療所のことをいう。以下同じ。)に対して、ドローンを用いて医薬品を配送する場合
薬局又は医療機関が調剤された薬剤を患者(患者の看護に当たっている者を含む。以下同じ。)に対して、ドローンを用いて配送する場合(薬局及び店舗販売業者が一般用医薬品を販売する場合を含む。)を対象に、配送元となりうる医薬品販売業者、薬局及び医療機関並びにドローンを用いて配送を行う者(配送を自ら行う医薬品販売業者、薬局又は医療機関及びこれらの者から委託を受けて配送を行う配送事業者をいう。以下同じ。)が留意すべき事項を定めるものである。
なお、本ガイドラインは、ドローンを用いた医薬品の配送の実施状況を踏まえ、必要に応じて見直しを行うこととする。
第2章 ドローン活用時の留意事項
1.基本的事項
ドローンを用いた医薬品の配送に当たって、配送を行う者は、内閣官房及び国土交通省により公表されている「ドローンを活用した荷物等配送に関するガイドライン」に記載されている関係法令等を遵守すること。加えて、医薬品の配送に当たっては、医薬品販売業者及び薬局は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和 35 年法律第 145 号。以下「薬機法」という。)第9条の2、第 29 条の3、第 31 条の5及び第 36 条の2の2並びに医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則(昭和 36 年厚生省令第1号)第 15 条の 11 の2、第 147 条の 11 の2、第 149 条の 15、第 156 条の2及び第 158 条において、医薬品の保管、販売その他の医薬品の管理等が適切に行われるために必要な措置を講じなければならないとされていることを踏まえ、他の配送方法を用いる場合と同様に、ドローンを用いて医薬品を配送する場合においても当該規定に基づいて適切な措置を講ずること。医療機関においても、医薬品販売業者及び薬局における遵守事項に準じて適切な措置を講ずること。
また、医薬品販売業者、薬局又は医療機関が医薬品を配送する手段については、薬機法に基づく医薬品の品質や安全性の確保等の観点のみならず、当該地域における医療提供等の観点から、以下の事項等について十分に検討を行った上で決定すること。
・配送する医薬品の品質や安全性の確保、配送先の事業者又は患者への速やかで確実な授与及び患者のプライバシー確保等の観点から配送手段を比較し、ドローンを用いた医薬品の配送が最も適切な手段と考えられる場合に限りドローンを用いた医薬品の配送を行うこと。なお、必要に応じ、薬局の従事者が届ける又は患者若しくはその家族等に来局を求める等、医薬品及び調剤された薬剤の性質等を踏まえ適切に対応すること。
・ドローンを用いた医薬品配送事業について、サービス提供地域における医療提供関係者(地域の医師会、薬剤師会、自治体の医務・薬務主管課等のことをいう。以下同じ。)と綿密に連携・協議の上で医薬品配送事業に係る事業計画を策定し、当該事業計画についてサービス提供地域における医療提供関係者の理解を得る必要があること。
2.医薬品販売業者又は薬局から、医薬品販売業者、薬局又は医療機関に対して、医薬品を配送する際の留意事項
(1)事業計画及び業務手順書の作成
ドローンを用いた医薬品配送事業の実施に当たって、配送を行う者は、1.の基本的事項を踏まえ、サービス提供地域、配送元、配送先及び以下の①~③の内容を明確にした事業計画及び当該事業計画において定めた配送方法を確実に実施するための業務手順書を作成すること。
なお、事業計画及び業務手順書の作成に当たっては、「医薬品の適正流通(GDP)ガイドラインについて」(平成 30 年 12 月 28 日付け厚生労働省医薬・生活衛生局総務課・監視指導・麻薬対策課事務連絡)の別添(医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン)も参考にすること。
① 配送の対象とする医薬品
配送を行う者は、配送の対象とする医薬品について、医薬品の品質保持及び配送先への確実な授与の観点から適切に配送可能なものを選定すること。また、劇薬を配送の対象とする場合には、関連法令を遵守する他、安全性の確保等においてより慎重な取扱いが必要であることに留意すること。
加えて、流通上厳格な管理が必要な麻薬・向精神薬、覚醒剤・覚醒剤原料、放射性医薬品及び毒薬については、当面の間、ドローンを用いた配送は避けること。ただし、災害時において、緊急に配送する必要があると認められる場合にはこの限りでない。
② 配送する医薬品の品質や安全性の確保
ドローンを用いた医薬品の配送に際しては、
ⅰ) 医薬品の梱包
ⅱ) 梱包された医薬品のドローンへの搭載
ⅲ) ドローンによる対象地点への配送
ⅳ) 対象地点に到着したドローンからの医薬品の取り出し及び受取等の過程が想定される。医薬品販売業者及び薬局は、上記の配送に係る全ての過程において、医薬品の品質や安全性が確保され、配送先に安全にかつ確実に受領される方法を考慮・検討してドローンを用いた医薬品の配送を実施すること。
ドローンを用いた医薬品の配送であっても、配送を行う者は、その他の方法による医薬品の配送と同様に、医薬品販売業者又は薬局の責任の下、当該医薬品の品質の保持(温度管理、振動等への対処を含む。)が担保される方法で梱包及び配送を行うこと。具体的には、・ 温度管理について、適切な温度が保たれることを担保するともに、配送時の振動・衝撃を受けても製品の品質が保たれることを試験等で担保する又は配送時の振動・衝撃が既存の配送方法と同程度以下であることを担保すること。
・ ドローンに複数の貨物を混載する場合においては、配送を行う者は、食品や生活用品等の医薬品以外のものと医薬品が明確に区別されるようにするなど、梱包方法に留意すること。
③ 配送先への確実な配送の方法
医薬品販売業者又は薬局が、ドローンを用いて配送先の医薬品販売業者、薬局又は医療機関へ医薬品を配送する場合には、配送元の医薬品販売業者及び薬局は、医薬品の配送の確実性が適切に担保されるよう、紛失防止等に必要な措置も含めて、配送先へ確実に配送される方法を考慮・検討し、決定すること。
その際、ドローンが大雨、強風等により運航ができないことを想定し、医薬品の配送をドローンのみに依拠するような医薬品配送事業とせず、既存の配送方法は引き続き実施できるようにしておく等、緊急時における代替手段は常に確保しておくこと。
また、ドローンが墜落・不時着した場合に備え、次の措置を講ずること。・ 配送していた医薬品を確実に回収できるよう、配送を行う者は、リアルタイムでドローンの飛行状況・位置情報等を管理するとともに、墜落・不時着時には速やかに配送していた医薬品の捜索・回収を行うこと。
・ 配送先に迅速に医薬品を届けるため、配送元は、墜落・不時着時に速やかに代替手段を講ずることができるよう、あらかじめ代替手段を検討した上で、対応できるように準備しておくこと。
・ 医薬品の梱包に鍵をつけるなどの方法により、落下物の拾得者が開封できないような措置を講ずるとともに、「関係者以外は開封厳禁」の旨及び拾得時の連絡先を医薬品の梱包に分かりやすく記載すること。
(2)事業の実施
事業の実施に当たっては、事業計画において決定した方法が確実に実施できるよう、(1)を踏まえて作成した業務手順書に従って業務を実施すること。
また、配送元の医薬品販売業者及び薬局は、配送を行う者との契約書において、事業計画において決定した方法が確実に実施されるよう、講じる措置及び責任の所在について事業計画に明記するとともに、医薬品の配送中においては、配送を行う者の事業の実施状況を確認すること。
配送を行う者は、医薬品の配送の実施に際し、別紙のチェックシートの確認事項に従って配送が各要件を満たしているか確認し、結果を自社のホームページ等で公表すること。
なお、要件を満たさない項目がある場合には、配送事業者は事業計画を作成する際に事業提供地域の医療提供関係者と協議するとともに、該当する項目と併せて、対応が不要な合理的な理由をチェックシートに記載すること。
3.薬局から患者に対して、薬剤を配送する際の留意事項
薬局から患者へドローンを用いて薬剤を配送する場合は、2.に示した事項に準じて配送を行うほか、以下の事項に留意すること。また、薬局又は店舗販売業者がドローンを用いて一般用医薬品を配送する場合についても、同様に対応すること。
(1)基本的事項に関する追加的留意事項
薬局開設者及び薬剤師は、患者に適切な薬剤を確実に授与する観点等から、調剤した薬剤の品質の保持及び患者への確実な授与に係る責任を負っており、ドローンを用いた薬剤の配送については、患者の同意を得た上で、当該薬剤の品質の保持や患者への確実な授与等がなされる範囲で実施可能である。(2)に示す事項を含め考慮・検討を行い、配送方法としてドローンを用いた薬剤の配送が最も適切な手段であって、患者が希望する場合にのみ、ドローンを用いた薬剤の配送を選択すること。また、患者が従前の配送方法も含めて、複数の配送方法から費用負担も勘案して自由に配送方法を選択できるようにし、費用負担の大きい配送方法を強いられることのないよう十分に配慮すること。
(2)患者に対する確実な授与及び紛失の防止に関する追加的留意事項
・ 薬局が患者に薬剤を提供する手段としてドローンを選択する場合には、患者に対して、ドローンを用いた薬剤の配送、受取方法についてドローンを用いた薬剤の配送ができない場合の代替手段、費用負担についての内容も含めて説明を行い、同意を得ること。また、同意の取得について説明の内容とともに記録しておくこと。
・ 薬局は、ドローンを用いた薬剤の配送時の受取方法について、薬剤を受け取る患者に十分に説明し、理解したことを確認した上で配送すること。
・ 薬局は、患者への薬剤の授与の方法等を踏まえ、患者が服用する具体的な薬剤が第三者から分からないようにするなど、患者のプライバシーに配慮するとともに、患者に誤った薬剤が授与されることがないよう、薬剤の梱包方法に留意すること。なお、複数の患者の薬剤をドローンを用いて一度に配送する場合には、薬剤の取り違えを防止する措置を講ずること。
・ 薬局は、薬剤の発送後、患者が受領するまでの間、当該薬剤の配送状況を把握できるようにすること。
・ 患者が薬剤を直接受け取る場合には、専用の鍵付きロッカーを用いるなど、確実に本人が受け取ることが担保可能な方法を用いること。また、薬局は、受取の方法等について患者に説明し、患者が確実かつ安全に受け取ることができないおそれがある場合には、別の方法を選択すること。
・ 薬局は、薬剤が確実に患者に授与されたことを電話、メール等により患者に確認すること。
(3)服薬指導の実施
薬機法第9条の4の規定に基づき、薬剤師は、対面(映像及び音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることが可能な方法等によるオンライン服薬指導を含む。)により、服薬指導を行わなければならないとされている。
このため、ドローンを用いて薬剤を配送する場合にあっても、薬機法に基づく服薬指導を適切に行った上で配送する必要がある。
また、薬機法に基づくオンライン服薬指導の具体的な方法については、「オンライン服薬指導の実施要領について」(令和4年9月 30 日付け薬生発 0930第1号厚生労働省医薬・生活衛生局長通知)に従うこと。
4.医療機関から患者に対して、薬剤を配送する際の留意事項医療機関から患者に薬剤を配送する場合においても、2.及び3.に準じた対応を行うこと。その際、医療機関の医師等は情報通信機器を利用した診療等の際に、薬剤の服用方法や保存方法等、薬剤の適正使用を確保するために必要な情報について患者に説明すること。