ドローンによる医薬品配送に関するガイドラインについて (通知 20210622)
2021/06/22
ドローンによる医薬品配送に関するガイドライン
2021年6月
内閣官房
厚生労働省
国土交通省
第1章 適用範囲
1.1 適用範囲
本ガイドラインは、ドローンの実証事業において、薬局開設者又は医療機関の開設者がドローンを用いて処方箋により調剤された薬剤を患者に配送する場合(薬局開設者及び店舗販売業者が一般用医薬品を販売する場合を含む。)及び卸売販売業者がドローンを用いて医薬品を医療機関等に配送する場合を対象とする。
なお、本ガイドラインは実証事業の実施状況を踏まえ必要に応じて見直しを行う。
第2章 ドローン活用時の留意事項
へき地等の患者に薬剤を提供する手段については、当該へき地等における医療提供の観点から十分に検討を行うこと。具体的には、患者へ必要となる薬剤の提供方法を考えること。患者に薬剤を配送する場合、①当該薬剤の品質確保、②患者本人への速やかで確実な授与、③患者のプライバシー確保、の観点から配送手段を比較し、最も適切な手段を選択すること。また、必要に応じ、薬局の従事者が届ける、患者又はその家族等に来局を求める等、薬剤の性質等を踏まえ適切に対応すること。
こうした検討を踏まえた上で、最も適切な手段であるとしてドローンを用いて薬剤を配送する場合は、以下の点に留意すること。
2.1 薬局から患者への薬剤の配送
処方箋に基づき調剤された薬剤について、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律の一部の施行について(オンライン服薬指導関係)(令和2年3月31 日付薬生発0331 第36 号)」等に基づき、ドローンを用いて患者に配送する場合は以下の手順に依ることとする。また、薬局及び店舗販売業からの一般用医薬品の配送等についても以下に示す事項に準じて、対応すること。
2.1.1 事業計画の策定
医師又は歯科医師から交付された処方箋により調剤された薬剤をドローンにより配送する場合は、2.1.2から2.1.6の内容に沿ってドローンの事業計画を策定することとし、当該事業計画の策定にあたっては、本ガイドラインに適合して実施することについて、実証事業対象地域の自治体における医務・薬務主管課に報告するとともに、当該地域の医療関係者、医師会、薬剤師会等の関係団体に事業計画を報告し、緊密に連携することとする。
2.1.2 運航主体の特定と責任主体の明確化
航空法の規定は「ドローンを飛行させる者」に対して適用されることから、薬局開設者が自らドローンを運航せず、配送を依頼する場合は、契約関係に基づき航空法上の責任主体を明確にすること。なお、運航主体者は、本実証事業を適切に行うことができる性能を有するドローンを用い、そのドローンを適切に運航する能力及び経験を有する操縦者に行わせるものである。
2.1.3 服薬指導の実施
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下「医薬品医療機器等法」という。)第9条の3の規定に基づき、薬局開設者は、医師又は歯科医師から交付された処方箋により調剤された薬剤の適正な使用のため、当該薬剤を販売し、又は授与する場合には、厚生労働省令で定めるところにより、その薬局において薬剤の販売又は授与に従事する薬剤師に、対面(映像及び音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることが可能な方法その他の方法により薬剤の適正な使用を確保することが可能であると認められる方法として厚生労働省令で定めるものを含む。)により、厚生労働省令で定める事項を記載した書面を用いて必要な情報を提供させ、及び必要な薬学的知見に基づく指導を行わせなければならないとされている。
このため、ドローンにより薬剤を配送する場合にあっても、当該規定に基づく服薬指導を適切に行う必要がある。
また、医薬品医療機器等法に基づくオンライン服薬指導の具体的な方法については、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律の一部の施行について(オンライン服薬指導関係)(令和2年3月31 日付薬生発0331 第36 号)」に従うこと。
2.1.4 品質の確保
医薬品医療機器等法第5条第1項第2号に基づき、「薬局並びに店舗販売業及び配置販売業の業務を行う体制を定める省令」(昭和39 年厚生省令第3号)第1条第1項第16 号において、薬局開設者は医薬品の販売又は授与の業務(医薬品の貯蔵に関する業務を含む。)に係る適正な管理を確保するため、指針の策定、従業者に対する研修の実施その他必要な措置を講じなければならないとされている。また、同条第2項第5号において調剤及び医薬品の販売又は授与に係る適正な管理のための業務に関する手順書の作成及び当該手順書に基づく業務の実施その他必要な措置を講じなければならないとされている。
ドローンによる配送に際しては、①調剤した薬局において当該薬剤をドローンにより配送するために必要な梱包を行うこと、②梱包された薬剤をドローンの容器等に入れること、③ドローンにより対象地点へ配送すること、④ドローンが対象地点へ到着後、薬剤を患者本人に届けること等の手続が想定されることから、薬局開設者は、事業計画の内容を踏まえ、薬局で調剤してから患者の手元に届くまでの全ての過程における手順を定める必要があること。
ドローンによる配送であっても、その他の手段による薬剤の配送と同様に薬局開設者の責任の下、上記のような全ての過程において、当該薬剤の品質の保持(温度管理への対処を含む。)が担保される方法で行うこと。
なお、配送に当たっては、「医薬品の適正流通(GDP)ガイドラインについて」(平成30 年12 月28 日付け厚生労働省医薬・生活衛生局総務課/監視指導・麻薬対策課事務連絡)の別添(医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン)における外部委託や輸送等の取扱いも参考にすること。
2.1.5 患者に対する確実な授与及び紛失の防止
ドローンによる配送に際しては、ドローンによる対象地点への配送後、配送された薬剤が患者本人に授与されるまでの間、配送事業者の従事者等を経由する場合が想定されることから、薬局開設者はその配送事業者の従業員等を特定するとともに、その配送責任を明確にすること。薬局開設者は、薬剤の発送後、患者に授与されるまでの間、当該薬剤の配送状況を把握できるようにすること。
医師又は歯科医師から交付された処方箋により調剤された薬剤については、ドローンからの薬剤の受取や患者本人への授与はへき地診療所等の看護師等の医療従事者が行うことを原則とする。やむを得ず医療従事者以外の従事者を介さざるを得ない場合は、当該従事者に薬剤の内容が分からないよう、封をするなどプライバシー確保に万全を期すこと。また、宅配ロッカー等を用いる場合や、
医療従事者以外の従事者が患者本人に薬剤を渡す場合は、薬局開設者は当該薬剤が確実に患者に授与されたことを電話又は配達記録等により確認すること。
なお、一般用医薬品を利用者に直接届ける場合については、薬局開設者及び店舗販売業者の責任の下、関係者が利用者に確実な授与を行うこと。
また、患者への授与の方法等の事業計画の内容を踏まえ、患者が服用する具体的な薬剤が他の人からわからないようにする等のプライバシーの配慮や患者に誤った薬剤が授与されることがないよう、食品や生活用品等の薬剤以外のものと明確に区別されるようにするなど、薬局での薬剤の梱包方法は留意すること。
さらに、当該薬剤の紛失等の防止や、配送事業者の従事者等が不適切な取扱いを行わないよう、2.1.4で示したとおり、調剤された薬剤の品質を確保する観点からその手順を明確にし、実証事業の実施に当たって薬局や配送業者が対応すべき業務マニュアルの作成・周知・遵守徹底を行うこと。
加えて、ドローンが墜落や不時着した場合において、確実に当該薬剤を回収できるよう、飛行状況を管理するとともに、墜落・不時着時には直ちに捜索・回収を行うこと。また、患者に迅速に薬剤を届ける必要があることから、あらかじめ墜落・不時着時の代替的な措置を検討した上で、対応できるように備えておき、このような場合には速やかに当該措置を講ずること。さらに、鍵をつけるなどの方法により拾得者が誤って開封できないような措置を講ずるとともに、「本人又は関係者以外は開封厳禁」との旨及び拾得時の連絡先を分かりやすく記載すること。
以上の事項を担保するため、薬局開設者は、薬剤の配送にあたり配送事業者を用いる場合、当該事業者との契約において明記すること。
なお、麻薬・向精神薬や覚醒剤原料、放射性医薬品、毒薬・劇薬等流通上厳格な管理が必要な薬剤については、実証実験、社会実装に関わらずドローンによる配送は避けること。
2.1.6 事故発生時の対応
ドローンを飛行させる者は、ドローンの飛行による人の死傷、第三者の物件の損傷、飛行時における機体の紛失又は航空機との衝突若しくは接近事案が発生した場合には、速やかに、許可等を行った国土交通省航空局安全部運航安全課、地方航空局保安部運用課又は空港事務所まで報告すること。なお、夜間等の執務時間外における報告については、24 時間運用されている最寄りの空港事務所に電話で連絡を行うこと。
2.2 医療機関による薬剤の配送
医療機関から患者に調剤された薬剤を配送する場合においても、2.1に準じた対応を行うこと。その際、医師等は電話や情報通信機器を利用した診療等の際に、薬剤の服用方法や保存方法等、薬剤の適正使用を確保するために必要な情報について患者に説明すること。
2.3 卸売販売業者による医薬品の配送
2.3.1 事業計画の策定
事業計画の策定にあたっては、2.1に準じた対応を行うとともに、ドローンにより配送する場合は、2.3.2から2.3.5の内容に沿ってドローンの事業計画を策定することとし、当該事業計画の策定にあたっては、本ガイドラインに適合して実施することについて、実証事業対象地域の自治体における医務・薬務主管課に報告するとともに、当該地域の医療関係者、医師会、薬剤師会等の関係団体に事業計画を報告し、緊密に連携することとする。
2.3.2 運航主体の特定と責任主体の明確化
航空法の規定は「ドローンを飛行させる者」に対して適用されることから、卸売販売業者が自らドローンを運航しない場合は、契約関係に基づき航空法上の責任主体を明確にすること。なお、運航主体者は、本実証事業を適切に行うことができる性能を有するドローンを用い、そのドローンを適切に運航できる能力及び経験を有する操縦者が運航を行うこと。
2.3.3 品質の確保
医薬品医療機器等法第36 条の2第1項に基づき、厚生労働大臣は、厚生労働省令で、営業所における医薬品の試験検査の実施方法その他営業所の業務に関し卸売販売業者が遵守すべき事項を定めることができるとされている。
これに基づき、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則(昭和36 年厚生省令第1号。以下単に「施行規則」という。)第158 条において、卸売販売業者は医薬品の販売又は授与の業務(医薬品の貯蔵に関する業務を含む。)に係る適正な管理を確保するため、指針の策定、従業者に対する研修の実施その他必要な措置を講じなければならないとされている。
ドローンによる配送であっても、その他の薬剤の配送と同様に卸売販売業者の責任の下、当該薬剤の品質の保持(温度管理への対処を含む。)が担保される方法で行うこと。また、「医薬品の適正流通(GDP)ガイドラインについて」(平成30 年12 月28 日付け厚生労働省医薬・生活衛生局総務課/監視指導・麻薬対策課事務連絡)の別添(医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン)を参考にすること。
2.3.4 医療機関等への確実な販売及び紛失の防止
卸売販売業者がドローンを用いて医療機関等へ医薬品を配送する場合は、施行規則第158 条の規定に基づき、指針への位置づけを含め、品質の確保や紛失の防止に必要な措置を講じなければならない。医療機関等へ当該医薬品が確実に販売されることを確保するため、卸売販売業者は、あらかじめ配送のための手順を定め、配送の際に必要な措置を講ずることが必要である。この手順には、卸売販売業者において薬剤師等が、梱包してから、医療機関等に届くまでの全ての過程における手順を含むものである。
また、当該医薬品の紛失等を防止するため、施行規則第158 条の4に基づき医薬品の購入等に関する記録に係る規定を遵守するとともに、配送事業者の従事者等が不適切な取扱いを行わないよう、業務マニュアルの作成・周知・遵守徹底を行う必要がある。
さらに、ドローンが墜落や不時着した場合において、確実に当該薬剤を回収できるよう、飛行状況を管理するとともに、墜落・不時着時には直ちに捜索・回収を行うこと。また、医療機関等に迅速に薬剤を届ける必要があることから、墜落・不時着時に速やかに代替的な措置を講ずることができるよう、あらかじめ代替的な措置を検討した上で、対応できるように備えておくこと。さらに、鍵をつけるなどの方法により拾得者が誤って開封できないような措置を講ずるとともに、「本人又は関係者以外は開封厳禁」との旨及び拾得時の連絡先を分かりやすく記載すること。
以上の事項を担保するため、配送事業者を用いる場合、当該事業者との契約において明記すること。
なお、麻薬・向精神薬や覚醒剤原料、放射性医薬品、毒薬・劇薬等流通上厳格な管理が必要な医薬品については、実証実験の段階でドローンによる配送は避けること。
2.3.5 事故発生時の対応
ドローンを飛行させる者は、ドローンの飛行による人の死傷、第三者の物件の損傷、飛行時における機体の紛失又は航空機との衝突若しくは接近事案が発生した場合には、速やかに、許可等を行った国土交通省航空局安全部運航安全課、地方航空局保安部運用課又は空港事務所まで報告すること。なお、夜間等の執務時間外における報告については、24 時間運用されている最寄りの空港事務所に電話で連絡を行うこと。
第3章 関係法令等
3.1 関係法令等
医薬品の配送については、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律その他の関係法令の規定に加え、『ドローンを活用した荷物等配送に関するガイドライン』に記載されている関係法令等を遵守すること。