規制改革推進に関する答申~デジタル社会に向けた規制改革の「実現」~(令和3年6月1日 規制改革推進会議)より、医療・介護ワーキング・グループの項を抜粋
規制改革推進に関する答申~デジタル社会に向けた規制改革の「実現」~(令和3年6月1日 規制改革推進会議)より、医療・介護ワーキング・グループの項を抜粋
4.医療・介護ワーキング・グループ
少子高齢化の進展は、医療・介護サービス需要の急速な拡大とともに、それを支える現役世代の負担増大をもたらしており、柔軟かつ効率的なサービスの提供により持続可能な医療・介護制度を確立していく必要性が求められて久しい。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴って生じた様々な問題は、こうした課題への対応の遅れを痛感させる結果となっている。
デジタル技術の活用は、現状を打破する極めて有効な手段である。人力中心の考え方や、「対面」・「場所」を重視した従来の発想を大胆に転換することが必要である。あわせて、安全性の追求はもちろんであるが、これに終始することなく、経済性や効率性も含めた観点からの規制改革を大胆に進め、あるべきサービス提供の将来像を早期に構築していくことが求められている。
また、近年の生活様式の変化により、疾病構造も変化している。革新的な医薬品や医療機器の早期開発がこれまで以上に求められるとともに、医療・介護分野における人的・金銭的リソースにも限界がある中で、これからの我が国では、一人一人が自らの健康に関心・責任を持つことが必要である。そのためにも、国民による、自身の医療情報や、必要な医薬品等への早期アクセスの実現が望まれる。
上記の課題認識の下、医療・介護ワーキング・グループでは、①医療分野におけるDX化の促進、②医薬品・医療機器提供方法の柔軟化・低コスト化、③最先端の医療機器の開発・導入の促進、④医療・介護分野における生産性向上、⑤オンライン診療・オンライン服薬指導の普及促進を軸に議論を行い、医療・介護分野における規制改革項目を以下のとおり取りまとめた。
(1)医療分野におけるDX化の促進
<基本的考え方>
医療分野におけるデジタル化の促進は、サービスの質を確保しながら業務の効率化を図るとともに、医療情報へのアクセスやその共有・活用を可能にし、新たなサービスの展開や患者起点のサービス選択を可能とする上でも極めて有効な手段である。しかしながら、文書の作成・確認や情報の共有・活用などに関する制度とその運用の仕組みについては、デジタル技術の活用を前提としたものとは言い難い現状にあり、医療現場の業務の大半は、いまだに人手を介した作業、紙でのやり取りを基本とした状況にある。
例えば、医療機関が作成・発行する文書については、電子署名の活用が普及しておらず、処方箋など記名押印を要する文書については紙ベースでのやり取りが主流となっている。また、大量の被験者データの処理を必要とする治験の実施に当たっても、ネットワークを介したデータの収受やデジタル処理には制約があり、医療機関に赴いての実地かつ紙ベースでの業務処理が基本となっている。さらに、患者本人に対する診療記録の提供に当たっても、医療機関での審査に相当程度の日数を要した上で、医療機関に来訪を求めて行われている現状にある。
以上の基本的考え方に基づき、以下の措置を講ずるべきである。
<実施事項>
ア 医療分野における電子認証手段の見直し
【令和3年度結論・措置】
a 「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」及び「電子処方箋の運用ガイドライン」(以下、本項において「ガイドライン」という。)について、厚生労働省の所管する法令の規定に基づく民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する省令(平成 17 年厚生労働省令第 44 号)において記名押印に代わるものとして認められている電子署名(電子署名及び認証業務に関する法律(平成 12 年法律第 102 号)第2条第1項の電子署名)の利用が可能である旨を医師法(昭和 23 年法律第 201 号)等の法令を踏まえ、規定する。その際、医療現場のニーズを踏まえ、電子署名の活用促進につながるようなガイドラインの内容を検討する。
b 処方箋等、医師等の国家資格の確認が必要な文書について電子署名を利用する場合には、当該資格の確認が必要であることを前提としつつ、従来から利用が推奨されているHPKIに加えて、これ以外の電子署名の利用に資するよう、当該資格の確認方法や確認する際の考え方について明らかにする。その際、医師等の国家資格の確認方法として、電子署名を施す者及び電子署名を検証する者の双方にとって負担とならない方法についても、医師法等の法令や医療現場のニーズを踏まえ検討する。
イ 治験の仕組みの円滑化
【令和3年度措置】
a 医療機関や関係者が電子カルテ等医療情報を授受するに当たって当事者が講ずべき安全措置やセキュリティ対策と併せて、外部ネットワーク等が活用可能であることを分かりやすく周知する。
b 医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(平成9年厚生省令第 28 号)に基づくモニタリングにおいて、電子カルテ等のデータをシステム的に処理して症例報告書等を作成した場合において、簡素な方法により原資料との照合・検証が可能であることを明確化し、周知する。
ウ 患者の医療情報アクセス円滑化
【a,c:令和3年検討開始、結論を得次第速やかに措置、b:令和3年度措置】
a 患者が診療情報の開示を請求する際の手続について、医療機関における診療情報の開示請求処理の実態を把握した上で、本人確認の在り方等を整理するとともに、オンラインでの請求申立てが可能であることを明確化し、「診療情報の提供等に関する指針」(以下、本項において「指針」という。)において記載することを検討し、結論を得る。
b 患者が診療情報の開示を受ける際、電磁的記録の提供による方法等で開示を請求できることを明確化し、「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」に記載する。
c 診療情報の開示について、医療機関における診療情報の開示請求処理の実態を把握した上で、開示に一定期間を要する場合には請求者に一定の応答を行うのが望ましいことを指針において記載するなど、開示を迅速化するための方策を検討し結論を得る。
(2)医薬品・医療機器提供方法の柔軟化・低コスト化
<基本的考え方>
高齢化の進展等に対応しながら求められる医療サービスの質・量を確保していく中にあっては、医薬品・医療機器の提供の在り方についても、柔軟かつ低コストなかたちが求められている。しかしながら、その開発から販売に至る各フェーズに関わる現行制度には、対面、特定の場所での業務処理を前提とした規制が存在するなど、デジタル化、機械化を始めとする近年の技術進歩のメリットを十全に活かしながら、安全性と効率性の両面を追求していく妨げになっているものが多いとの指摘がある。
例えば、一般用医薬品の販売においては、販売時間規制の見直しや情報通信機器を活用した方法の検討により、国民のアクセス・利便性の向上を図ることが必要である。薬局業務全体についても、技術の進歩により調剤業務の効率化が可能となっている実態などを踏まえ、その在り方について検討する必要がある。また、中古医療機器の販売等に当たっては、製造販売業者への事前通知とその指示に従うことが必要とされており、継続使用可能な機器の取得・使用をも阻害しかねない現状にある。さらに、使用済み単回使用医療機器を用いて再製造するための仕組みについては、使用済み機器の再製造に対する廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和 45年法律第 137 号。以下 「廃棄物処理法」 という。)の適用の要否が自治体によって異なること等により、制度に基づく円滑な事業の実施を困難にしているとの指摘がある。
以上の基本的考え方に基づき、以下の措置を講ずるべきである。
<実施事項>
ア 一般用医薬品販売規制の見直し
【a:措置済み、b:引き続き検討を進め、早期に結論】
a 薬局並びに店舗販売業及び配置販売業の業務を行う体制を定める省令(昭和 39年厚生省令第3号)における一般用医薬品の販売時間規制(一般用医薬品の販売時間が当該店舗の開店時間の一週間の総和の2分の1以上)を廃止する。
b 一般用医薬品の販売に関して、情報通信機器を活用した店舗販売業における一般用医薬品の管理及び販売・情報提供について、薬剤師又は登録販売者が一般用医薬品の区分に応じて実施すべき事項や、店舗販売業者の責任において販売することなどを前提に、薬剤師又は登録販売者による情報通信機器を活用した管理体制・情報提供の在り方について検討した上で、必要な措置をとる。
イ 中古医療機器売買の円滑化
【令和3年度検討開始、早期に結論】
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則(昭和 36 年厚生省令第 1 号)に定める中古医療機器の販売等に係る通知及び指示について、製造販売業者から販売業者等への指示の実態を把握し、当該指示の適正な実施を確保するための方策を講ずること等について検討する。
ウ 単回使用医療機器再製造品の普及
【令和3年度措置】
a 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和 35 年法律第 145 号。以下「医薬品医療機器等法」という。)の規定に基づく許可を受けた製造販売業者が、再製造の目的で医療機関等から医療機器又はその部材を受入れ、分解、洗浄等を行うことについては、医薬品医療機器等法に基づく個別製品の承認及び同法に基づく「再製造単回使用医療機器基準」(平成 29 年厚生労働省告示第 261 号)に基づき実施するため、廃棄物処理法の規定によらず、実施可能であることを各都道府県・各政令市産業廃棄物行政主管部宛等に通知等で明らかにする。
b 医薬品医療機器等法に基づく承認申請のために行われる、単回使用の医療機器の再製造に係る試験研究において、当該試験研究に用いる医療機器が廃棄物に該当する場合は、「『規制改革・民間開放推進3か年計画』(平成 17 年3月 25 日閣議決定)において平成 17 年度中に講ずることとされた措置(廃棄物処理法の適用関係)について」(平成 18 年3月 31 日付け環廃産発第 060331001 号通知) の措置を活用することにより、廃棄物処理業の許可及び廃棄物処理施設の設置許可を要することなく、当該試験研究が行えることを明確化する。
エ 調剤業務の効率化
【令和3年度検討開始、早期に結論】
薬局における薬剤師の対人業務を充実させるため、調剤技術の進歩や医薬品の多様化等の変化を踏まえ、調剤に係る業務プロセスの在り方を含め、医療安全を確保しつつ調剤業務の効率化を進める方策を検討し、必要な見直しを行う。
(3)最先端の医療機器の開発・導入の促進
<基本的考え方>
テクノロジーの進展により、アプリ・ウェアラブルデバイス・AIなどを医療・健康領域に利活用するデジタルヘルス領域の社会実装に関する動きが活発化しており、世界的にデジタルヘルス市場は、非常に高い成長が期待されている。我が国においても、AIを搭載した画像診断支援プログラム医療機器第1号が、2018 年に承認されるなど産業化に向けた動きが活発化している。
しかしながら、医学的に妥当性のあるプログラム医療機器(SaMD)が開発され活用されている一方で、医薬品医療機器等法に基づく医療機器の承認審査等の仕組みが、ソフトウェアであるSaMDの特性を十分に踏まえておらず、開発・普及の遅延要因となっているとの指摘がある。さらに、企業が事業化する際に最も重要視する保険償還に関する予見可能性が低く、開発当初から積極的な投資を行うことが困難な状況にあるとの指摘がある。
また、AI画像診断機器の開発に当たっても、既存の画像データや患者情報を円滑に活用するための取扱基準等が不明確であり、開発立ち遅れの原因(ボトルネック)となっているとの指摘がある。
こうした状況を踏まえ、先端医療機器等の開発・導入並びにその産業化について、我が国が世 界をリードしていけるような環境整備が求められている。そのためには、従来とは異なる発想でSaMDの特性に見合った開発・承認の仕組み作りを進めるとともに、その進捗・成果を継続的に確認していくことが不可欠である。
以上の基本的考え方に基づき、以下の措置を講ずるべきである。
<実施事項>
【a,b,c,e:措置済み、d,f,g,h:令和3年度検討・結論、i,j,k:令和3年度措置】
a プログラム医療機器開発におけるビジネス展開の予見可能性を高めるために、医薬品医療機器等法上の医療機器該当性、承認手続及び保険適用の可能性について、一元的な事前相談が可能な体制を整備する。また、現在、プログラム医療機器該当性に関する相談窓口である各都道府県の相談窓口・担当者ごとに判断にばらつきが生じないよう、データベースでの情報共有等を行うことで、統一的な判断を行える体制を整備する。
b プログラムにおける、プログラム医療機器への該当性の判断が容易になるよう、既存事例の追加やプログラム医療機器該当性の基準を明確化する。
c 厚生労働省は、各都道府県等の相談窓口でのプログラム医療機器該当性の判断結果を共有できるデータベースを構築し、定期的にアップデートする。加えて、相談した事業者の情報公開の同意がある場合には、厚生労働省のホームページで公開するなど他の事業者による閲覧を可能とする。
d プログラム医療機器等の開発等における萌芽的シーズを国内外の状況調査を実施することにより早急に把握し、今までの医療機器とは異なる性質を持つプログラムとしての特性を踏まえた一定の分類ごとに審査の考え方を整理し、分類ごとに求められるエビデンスや治験の実施方法等を明確化した上で、具体的な評価指標を作成する。
e プログラム医療機器等の最先端の医療機器の承認審査には、従来の医療機器評価に必要とされる知見のみならず、異なる分野(IT・プログラム・ソフトウェア)の専門性が求められることから、その審査に特化し専門性を有した審査体制を構築する。加えて、薬事・食品衛生審議会にプログラム等に特化した専門調査会を新設し、早期承認・実用化に向けた体制強化を行う。
f プログラム医療機器について、プログラムの特性を踏まえ、柔軟かつ迅速な承認を可能とする審査制度を検討する。また、承認後にも継続的なアップデートが想定されるプログラム医療機器については、当該アップデートに係る一部変更承認申請の要否等に関するルールについても整理し、明確化する。
g 診療報酬上の技術料等の算定におけるプログラム医療機器の評価については、医療従事者の働き方改革等の視点を含めて、当該プログラム医療機器を活用して患者に対して提供される医療の質の確保・向上に係る評価の考え方を明確化する。
h プログラム医療機器を使用した医療技術について、先進医療として保険外併用療養費制度の活用が可能であることを周知するとともに、選定療養の枠組みの適用についても検討する。
i 医療機器販売業の許可申請又は届出において、電気通信回線を通じてプログラム医療機器を提供する事業者については、有体物の医療機器の販売を前提とした当該営業所の平面図等の提出書類の省略を可能とするなど、真に必要なものに限定する。
j AI画像診断機器等の性能評価において、仮名加工情報を利用することの可否について検討した上で、教師用データや性能評価用データとして求められる医療画像や患者データについて整理を行い、当該データを仮名加工情報に加工して用いる際の手法等について具体例を示す。あわせて、仮名加工された医療情報のみを用いて行うAI画像診断機器等の開発・研究等への「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」(令和3年文部科学省・厚生労働省・経済産業省告示第1号)の適用の要否について整理を行い、その結果について周知する。k 診断用プログラム医療機器等の承認申請に用いる性能評価試験において、新たに人体への侵襲や介入を伴うことなく、既存の医療画像データや診療情報のみを利用して性能評価を行う場合においては、当該試験を治験として実施する必要がないということを改めて明確化する。
(4)医療・介護分野における生産性向上
<基本的考え方>
限られた医療・介護人材により、今後も需要増が予想される医療・介護サービスの質・量を確保していくためには、現場の生産性向上、働き方の転換が急務であるが、各事業者の業務実施に関する従来からの制度は、書面・対面による処理、特定の場所での活動を前提とするものが多く、デジタル技術の活用等を通じて、求められる役割を効率的に遂行することの障壁となっているものも多くみられる。
例えば、一定規模以上の事業場において専属で選任が必要な産業医(以下「専属産業医」という。)については、事業場への常駐が求められており、専属産業医が行う職務は、原則、事業場内で実施することが必要とされてきた。また、歯科技工士についても、特定の歯科技工所内での業務実施が前提とされており、機器の高度化等に対応したリモートワークなどを可能とするルールは未整備であった。さらに、介護事業所での業務についても、文書の作成・送付や管理・保管への対応が相当程度のウエイトを占める等の現状にあることから、必要な対人サービスに専心できる環境を早期に構築していくことが求められる。
以上の基本的考え方に基づき、以下の措置を講ずるべきである。
<実施事項>
ア 産業医の常駐及び兼務条件の緩和
【措置済み】
a 産業医の業務に関して、労働衛生水準を損なうことなくオンラインで実施可能な業務内容等を整理した上で、専属産業医に求められている常駐の必要性を見直し、オンラインで実施可能な業務の考え方等を通知等で明らかにする。
b オンラインで実施可能な業務内容等の整理の結果等を踏まえて、「専属産業医が他の事業場の非専属の産業医を兼務することについて」(平成9年3月 31 日基発第 214 号)及び「専属産業医が他の事業場の非専属の産業医を兼務する場合の事業場間の地理的関係について」(平成 25 年 12 月 25 日厚生労働省労働基準局安全衛生部労働衛生課長通知)により求められている、専属産業医が他の事業場の非専属産業医を兼務する際の地理的要件(1時間以内で移動できる範囲)を廃止する。
イ デジタル化の進展等に対応するための歯科技工業務の見直し
【a,b:令和3年度措置、c:令和3年度検討・結論、結論を得次第速やかに措置、d:令和3年度検討開始、結論を得次第速やかに措置】
a 複数の歯科技工士等による歯科技工所の共同開設が可能であることを明確化し、周知する。
b 他の歯科技工所や歯科技工所以外で行われる業務に対する歯科技工所の管理者の責任を明確化した上で、CAD/CAM装置等を用いた自宅等でのリモートワークが可能であることを明確化し、周知する。
c 歯科技工業務の前提となる歯科医師による指示、業務従事者や構造設備等について行うこととされる歯科技工所の届出の内容を見直した上で、歯科技工に使用する機器を複数の歯科技工所が共同利用することが可能であることを明確化し、周知する。
d 歯科技工技術の高度化やデジタル化、歯科技工士の就業ニーズの変化を踏まえ、歯科技工所の構造設備基準や歯科技工士の新たな業務の在り方等を総合的に検討し、必要な措置を講ずる。
ウ 介護サービスの生産性向上
【令和3年度以降逐次措置】
a 「社会保障審議会介護保険部会『介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会』中間取りまとめを踏まえた対応について」(令和2年3月及び令和3年3月厚生労働省老健局長通知)に示された事項の取組状況を把握した上で、介護事業所が指定権者である都道府県等に提出を要する文書の更なる簡素化・標準化に取り組む。また、事業所指定に関する申請など介護事業者が行政機関に対して行う文書提出のオンライン化に向けて、介護サービス情報公表システムの改修を着実に行うとともに、継続的な機能拡充に取り組む。
b 介護サービス事業者間におけるケアプランの電子的な送付・保存を可能とする「ケアプランデータ連携システム」について、今後の工程・スケジュールを明らかにした上で早期の運用開始に向けて取り組む。また、ICT導入支援事業の実施状況・効果を継続的に検証し、介護職員等が行う介護記録の作成・保存やこれに基づく報酬請求事務の一層の電子化に取り組む。
c ICT・ロボット・AI等の技術の進展とその導入による介護現場の業務効率化の効果を継続的に検証し、引き続き、介護報酬上の評価の見直し等を検討する。
(5)オンライン診療・オンライン服薬指導の普及
【a:新型コロナウイルス感染症が収束するまでの間、継続的に措置、b:骨格については令和3年夏目途に取りまとめ、実施に向けた取組は骨格取りまとめ後、順次検討・結論・措置】
<基本的考え方>
オンライン診療・服薬指導については、昨年来、新型コロナウイルス感染症が拡大している状況下において、院内も含めた感染拡大の防止のため、初診からの実施を可能とし、希望する患者が幅広く受診できる時限的措置を実施しているところである。また、オンライン診療・服薬指導は、様々な理由で受診や服薬指導が困難な患者の受診等の機会を確保するとともに、医療サービスの効果的・効率的な提供に資する点で極めて有効な手段である。
オンライン診療・服薬指導のこうした特性を踏まえ、新型コロナウイルス感染症が収束するまでの間及び収束後においても、安全性と信頼性をベースにその活用を積極的に推進していくことが望ましい。
以上の基本的考え方に基づき、以下の措置を講ずるべきである。
<実施事項>
a オンライン診療・服薬指導については、新型コロナウイルス感染症が収束するまでの間、現在の時限的措置を着実に実施する。
b 感染収束後において、デジタル時代に合致した制度となるよう、初診の取扱い、対象疾患等恒久化の内容について検討を行い、その骨格を取りまとめた上で、診療報酬上の取扱いも含めて実施に向けた取組を進める。その際、安全性と信頼性をベースとし、時限的措置において明らかとなった課題や患者の利便性等を踏まえ、恒久化の内容について、具体的なエビデンスに基づき、検討を行う。
(6)重点的にフォローアップに取り組んだ事項
ア 医療・介護関係職のタスクシフト
特定行為に係る看護師の研修制度の推進、医療機関内における救急救命士の活用、介護現場における看護職員による医療行為や介護職員によるケア行為の円滑的な実施について、規制改革実施計画どおりの進捗を確認した。
今後とも、当該実施事項の着実な実施を通じて、医療機関における関係職種間の最適な役割分担の実現、医療機関全体としての勤務環境改善などのアウトカムの実現に結びつくよう、引き続きフォローアップを行っていく。
イ 介護サービスの生産性向上
介護事業者の行政対応・間接業務に係る負担軽減に向けた取組などについて、規制改革実施計画どおりの進捗を確認した。
このうち、行政に提出する文書については、「介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会」の中間取りまとめを踏まえた対応として、簡素化、標準化、ICT等の活用に関する対応方針が、地方公共団体向けの局長通知等において示されたところである。また、事業所のケア記録・ケアプラン等については、ICT導入支援事業による支援、ケアプランデータ連携システムの構築による文書の削減・電子化の方針などが示されたところである。さらに、介護ロボット等の導入についても、令和3年度介護報酬改定において夜間人員配置基準について一定の緩和が行われたところである。
しかしながら、これらの取組が成果を挙げるまでには道半ばの状況であり、継続的な取組が不可欠である。あわせて、医療・介護ワーキング・グループでは、制度改正に関するサービス利用者への説明に当たって、保険者の役割を活用することが有用との指摘も行われたところである。これらを踏まえ、介護現場における負担感の解消につながる取組を、引き続き促していく必要がある。
ウ 一般用医薬品(スイッチOTC)選択肢の拡大
厚生労働省におけるセルフメディケーション推進のための部局横断的な体制構築、「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」(以下「評価検討会議」という。)の運営改善に向けた取組などについて、規制改革実施計画どおりの進捗を確認した。
このうち、セルフメディケーションの推進に関しては、「セルフメディケーション推進に関する有識者検討会」が令和3年2月に設置され、安全性に加え、経済性の観点を含めたスイッチOTC化の促進策が検討されることとなっている。また、評価検討会議においても、同月の「中間とりまとめ」において、スイッチOTC化が可能と考えられる医薬品の考え方、会議運営の見直しなどの方針が整理されたところである。
一般用医薬品及び検査薬のスイッチOTC化の実績が向上するよう、今後とも、規制改革実施計画に沿った取組について、引き続きフォローアップを行っていく。
エ 社会保険診療報酬支払基金に関する見直し
審査支払新システムの稼働(令和3年9月予定)に向けた進捗状況や、国民健康保険中央会等も含めた審査支払機能の在り方に係る検討状況を中心にフォローアップを行い、規制改革実施計画どおりの進捗を確認した。
当該新システムの稼働後2年以内には「レセプトの9割程度をコンピュータチェックで完結する」等の目標が掲げられているところであり、引き続きその達成状況について注視していく必要がある。あわせて、国民健康保険中央会等を含めた審査支払機能の在り方についても、令和6年予定の国保総合システムの更改に向けた工程が示されているところであり、審査基準の統一化、審査支払システムの整合的かつ効率的な運用の実現に向けて引き続きフォローアップを行っていく。