骨太方針2019を読む(社会保障)⑨

2019/07/08

(ⅰ)医療・福祉サービス改革プランの推進
医療・福祉サービス改革プランにより、ロボット・AI・ICT等、データヘルス改革、タスク・シフティング、シニア人材の活用推進、組織マネジメント改革、経営の大規模化・協働化を通じて、医療・福祉サービス改革による生産性の向上を図ることにより、2040年における医療・福祉分野の単位時間サービス提供量について5%以上向上、医師については7%以上向上させる。データヘルス改革を推進し、被保険者番号の個人単位化とオンライン資格確認の導入、「保健医療データプラットフォーム」の2020年度の本格運用開始、クリニカル・イノベーション・ネットワークとMID-NETの連携、AIの実装に向けた取組の推進、栄養状態を含む高齢者の状態やケアの内容等のデータを収集・分析するデータベースの構築、AIも活用した科学的なケアプランの実用化に向けた取組の推進などの科学的介護の推進等を行う。レセプトに基づく薬剤情報や特定健診情報といった患者の保健医療情報を、患者本人や全国の医療機関等で確認できる仕組みに関し、特定健診情報は2021年3月を目途に、薬剤情報については2021年10月を目途に稼働させる。さらに、その他のデータ項目を医療機関等で確認できる仕組みを推進するため、これまでの実証結果等を踏まえ、情報連携の必要性や技術動向、費用対効果等を検証しつつ、医師や患者の抵抗感、厳重なセキュリティと高額な導入負担など、推進に当たっての課題を踏まえた対応策の検討を進め、2020年夏までに工程表を策定する。あわせて、医療情報化支援基金の使途や成果の見える化を図りつつ、電子カルテの標準化を進めていく。介護情報との連携を進めるに当たって、手法等について引き続き検討する。医療保険の審査支払機関について、「支払基金業務効率化・高度化計画・工程表」等に掲げられた改革項目を着実に進める。


他の産業と比較して、医療・介護分野はオートメーション化、ICT化が遅れてきたため、一度に様々な変革が要求されているような気がする。とにかく盛りだくさんだ。

この部分で気になるのは「2040年における医療・福祉分野の単位時間サービス提供量について5%以上向上、医師については7%以上向上させる」との一文だ。細かい説明がないため、第2回経済財政諮問会議の資料から該当部分を探してみると、下記のようなスライドが見つかった。

第2回経済財政諮問会議
令和元年5月31日 根本臨時議員提出資料より
第2回経済財政諮問会議
令和元年5月31日 根本臨時議員提出資料より

数値的改善をもたらすには、分子となるサービス提供料を増やすか、分母にくる従事者の総労働時間を減らすかがカギとなる。いずれにしても医療・福祉サービスの従事者は多忙を極めるため、医療・福祉の専門職がすべきこととそうでないことの区別とタスクシフティングの手法構築に加えて、ICT等のテクノロジーによる効率化が並行して行われることでしか実現は困難である。

ちなみに、医師のタスクシフティングが進めば、これまで責任の所在が医師に集中していた構図が変わることになる。医師を取り巻く医療職には、権限が委譲されるばかりでなく、法的な責任割合も移ることとなる。

2021年度中には何らかの形で投薬データの一元管理が始まりそうだ。単純に「便利だね~」では済まされないと考えなけえばならない。例えば、B薬局・薬剤師「A薬局では疑義照会もせずにこの調剤を行ったのか。今回、ドゥーで処方が出ているが、医師に確認しないといけないな。」というようなことが起こりうる。

想像力、想像力。

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